般若波羅蜜多心経 http://www.koudou-t.com/
唐三蔵法師玄奘譯
岩波文庫 中村 元 紀野 一義 訳註より
*ひろさちやさんの著書「こだわりを捨てる」(般若心経)からの抜粋です。
観 自 在 菩 薩 かんじ ざいぼさつ |
観自在菩薩 全知者である覚った人に礼したてまつる *観自在菩薩が |
行 深 般 若 波 羅 密 多 時 ぎょうじん はんにゃ は ら みった じ |
深般若波羅密多を行じし時 求道者にして聖なる観音は、深遠な智慧の完成を実践していたときに *かつてほとけの智慧の完成を実践されたとき、 |
照 見 五 蘊 皆 空 しょう けん ご おん かい くう |
五蘊皆(みな)空なりと照見して 存在するものには五つの構成要素があると見きわめて *肉体も精神もすべてが空であることを照見され、 |
度 一 切 苦 厄 ど いっ さい く やく |
一切の苦厄を度したまえり しかも彼はこれらの構成要素がその本性からいうと実体のないものであると見ぬいたのである *あらゆる苦悩を克服されました。 |
舎 利 子 しゃ り し |
舎利子よ シャーリプトラよ、 |
色 不 異 空 しき ふ い くう |
色は空に異ならず この世においては、物質的現象(色)には実体ががないのであり、 |
空 不 異 色 くう ふ い しき |
空は色に異ならず 実体がない(空)からこそ、物質的現象(色)で(あり得るので)ある。 |
色 即 是 空 しき そく ぜ くう |
色はすなわちこれ空 実体がないといっても、それは物質的現象を離れてはいない。 |
空 即 是 色 くう そく ぜ しき |
空はすなわちこれ色なり また、物質的現象は、実体がないことを離れて物質的現象であるのではない。 |
受 想 行 識 亦 復 如 是 じゅそう ぎょう しき やくぶ にょ ぜ |
受想行識もまたまたかくのごとし これと同じように、感覚も、表象も、意思も、知識も、すべて実体がないのである。 |
舎 利 子 しゃ り し |
舎利子よ シャーリプトラよ |
是 諸 法 空 相 ぜ しょ ほう くう そう |
この諸法は空相にして この世においては、すべての存在するものには実体がないという特性がある。 |
不 生 不 滅 ふ しょう ふ めつ |
生ぜず、滅せず、 生じたということもなく、滅したということもなく、 |
不 垢 不 淨 ふ く ふ じょう |
垢つかず、浄からず 汚れたものでもなく、汚れを離れたものでもなく、 |
不 増 不 減 ふ ぞう ふ げん |
増さず、減らず、 減るということもなく、増すということもない。 |
是 故 空 中 ぜ こ くう ちゅう |
この故に、空の中には、 それゆえに、シャーリプトラよ、実体がないという立場においては、 |
無 色 む しき |
色もなく、 物質的現象もなく、 |
無 受 想 行 色 む じゅ そう ぎょう しき |
受も想も行も色もなく 感覚もなく、表象もなく、意思もなく、知識もない。 |
無 眼 耳 鼻 舌 身 意 む げん に び ぜっ しん い |
眼も耳も鼻も舌も身も意もなく、 眼もなく、耳もなく、鼻もなく、舌もなく、身体もなく、心もなく |
無 色 聲 香 味 觸 法 む しき しょう こう み そく ほう |
色も声も香も味も触も法もなし。 かたちもなく、声もなく、香りもなく、味もなく、触れられる対象もなく、心の対象もない。 |
無 眼 界 む げん かい |
眼界もなく、 眼の領域から |
乃 至 無 意 識 界 ない し む い しき かい |
乃至、意識界もなし。 意識の領域にいたるまでことごとくないのである。 |
無 無 明 む む みょう |
無明もなく、 (さとりもなければ、)迷いもなく、 |
亦 無 無 明 盡 やく む む みょう じん |
また、無明の尽きることもなし。 (さとりがなくなることもなければ、)迷いがなくなることもない。 |
乃 至 無 老 死 ない し む ろう し |
乃至、老も死もなく、 こうして、ついに、老いも死もなく、 |
亦 無 老 死 盡 やく む ろう し じん |
また、老と死の尽きることもなし。 老いと死がなくなることもないというにいたるのである。 |
無 苦 集 滅 道 む く しゅう めつ どう |
苦も集も滅も道もなく 苦しみも、苦しみの原因も、苦しみを制することも、苦しみを制する道もない。 |
無 智 亦 無 得 む ち やく む とく |
智もなく、また、得もなし。 知ることもなく、得るところもない。 |
以 無 所 得 故 い む しょ とく こ |
得る所なきを以ての故に。 それ故に、得るということがないから、 |
菩提薩? 依般若波羅蜜多故 ぼ だい さっ た え はん にゃ は ら みった こ |
菩提薩?は、般若波羅蜜多に故に。 諸の求道者の智慧の完成に安んじて、 |
心 無 ? 礙 しん む けい げ |
心に?礙なし。 人は、心を覆われることなく住している。 |
無 ? 礙 故 む けい げ こ |
?礙なきが故に、 心に覆うものがないから、 |
無 有 恐 怖 む う く ふ |
恐怖あることなく、 恐れがなく、 |
遠 離 [一切] ? 倒 夢 想 おん り いっさい てん とう む そう |
(一切の)?倒夢想を遠離して ?倒した心を遠く離れて、 |
究 竟 涅 槃 く きょう ね はん |
涅槃を究竟す。 永遠の平安に入っているのである |
三 世 諸 佛 さん ぜ しょ ぶつ |
三世諸佛も 過去・現在・未来の三世にいます目ざめた人々は、 |
依 般 若 波 羅 蜜 多 故 え はん にゃ は ら みっ た こ |
般若波羅蜜多に依るが故に、 すべて、智慧の完成に安んじて、この上ない正しい目ざめを覚り得られた。 |
得 阿 耨 多 羅 三 藐 三 菩 提 とく あ のく た ら さん みゃく さん ぼ だい |
阿耨多羅三藐三菩提を得たまえり。 この上ない正しい目ざめを覚り得られた。 |
故 知 般 若 波 羅 蜜 多 こ ち はん にゃ は ら みっ た |
故に知るべし、般若波羅蜜多は それ故に人は知るべきである。 |
是 大 神 咒 ぜ だい じん しゅ |
これ大神咒なり。 智慧の完成の大いなる真言、 |
是 大 明 咒 ぜ だい みょうしゅ |
これ大明咒なり。 大いなるさとりの真言、 |
是 無 上 咒 ぜ む じょう ゅ |
これ無上咒なり。 無上の真言、 |
是 無 等 等 咒 ぜ む とう どう しゅ |
これ無等等咒なり。 無比の真言は、 |
能 除 一 切 苦 のう じょ いっ さい く |
よく一切の苦を除き、 すべての苦しみを鎮めるものであり、 |
眞 實 不 虚 故 しん じつ ふ こ こ |
真実にして虚ならざるが故に。 偽りがないから真実であると。 |
説 般 若 波 羅 蜜 多 咒 せつ はん にゃ は ら みっ た しゅ |
般若波羅蜜多の咒を説く。 その真言は、智慧の完成において |
即 説 咒 曰 そく せつ しゅ わつ |
すなわち咒を説いて曰く、 次のように説かれた。 |
掲 帝 掲 帝 波 羅 掲 帝 ぎゃてい ぎゃてい は ら ぎゃ てい |
掲帝 掲帝 波羅掲帝 ガテー ガテー パーラガテー (往ける者よ、往ける者よ、彼岸に往ける者よ、 |
波 羅 僧 掲 帝 菩 提 僧 莎 訶 は ら そう ぎゃてい ぼ じ そ わか |
波羅僧掲帝、菩提僧莎訶 パーラサンガテー ボーディ スヴァーハー 彼岸に全く往ける者よ、さとりよ、幸あれ。) |
般 若 波 羅 蜜 多 心 経 はんにゃ は ら みっ た しん ぎょう |
般若波羅蜜多心経 ここに、智慧の完成の心を終わる。 |