不動明王「(C)2004 RayLand」

不動明王
祥琳作 【不動明王】 
■別名 お不動さん 不動金剛明王 無動尊
■本籍 不空羂索神変真言経 大日経
■お姿 坐像 結跏趺坐 右手に宝剣又は利剣 左手に羂索を持つ
      瑟瑟(シツシツ)座 火炎光背
■異形像 立像 岩座 火炎光背

御真言
[火界呪(かかいじゅ)]:ノウマク サラバタタギャテイビャク サラバボッケイビャク サラバタ タラタ
              センダマカロシャダ ケン ギャキギャキ サラバビキンナン ウン タラタ カンマン
       
(全方位の一切如来に礼したてまつる。一切時一切処に残害破障したまえ。
        最悪大忿怒尊よ。カン。一切障難を滅尽に滅尽したまえ。フーン。残害破障したまえ。
        ハーン。マーン。)


[慈救呪(じくのしゅ)]:ノウマク サマンダバザラダン センダマカロシャダ ソワタヤ ウン タラタ カン マン
      
(遍満する金剛部諸尊に礼したてまつる。暴悪なる大忿怒尊よ。砕破したまえ。忿怒したまえ。
       害障を破摧したまえ。ハーン・マーン)


[不動一字呪(いちじしゅ)]:ノウマク サマンダ バザラダン カン
      
(あまねき金剛尊に礼したてまつる。ハーン)

梵字:カーンマン(上半分カーンで表すことも多い)
種字は、一字呪の最後の字「かん」、また「かんまん」。
  「かん」は、不動堅固の行によって、煩悩の深い者を大空三昧(菩提)へ導いてくださる梵字。
  「かんまん」は、「かん」が不動心、「まん」は、柔軟心」を表している。

●サンスクリット語では「アチャラナータ」といい、シヴァ神の異名である。五大明王の筆頭。激しく燃えさかる炎を背後にし、眼光鋭く、右手には「降魔(ごうま)の剣」、左手には綱をもっている。そして、矜羯羅(こんがら)、制た迦(せいたか)の二童子を初めとして、八大童子などの使者を従えている。背後の猛火は、迦楼羅鳥の吐き出す火炎であり、「迦楼羅炎」(かるらえん)と呼ばれる。

●インドの神話。ブラフマー、ヴィシュヌとトリムールティを形成するヒンドゥー教三大神の一人。シヴァとは「吉祥な」という意味で、『リグ・ヴェーダ』では、暴風神ルドラの別称であった。強力な破壊神であるルドラは、豪雨、雷などによって人間を殺す恐ろしい神であったが、反面病を癒やす治癒神でもあった。ルドラは、モンスーンの神格化であり、破壊をもたらすと共に、雨によって植物を育てるという二面性を持ち合わせていたのだ。その二面性は、後のシヴァへと受け継がれることになった。
 創造神であるヴィシュヌも、シヴァの破壊がなければ役に立たない。そう言い切る所が、ヒンドゥー教の大らかさとも言えるだろう。
 シヴァは、破壊神という顔の他に「ナタラージャ(踊りの王)」とも呼ばれ、舞踏の神でもある。

 シヴァの姿は、裸体に虎の皮を纏い、首には数珠と蛇を巻き付けた姿で描かれることが多い。ぼさぼさの髪を無造作に束ね、手には三叉戟を握っている。これは、つまり遊行者のスタイルである。現在でも、シヴァ派の寺院に行けば、シヴァ神そっくりな苦行僧を見ることが出来るだろう。
 彼らのもっとも目立つ特徴は、額に引かれた3本の線である(逆に、ヴィシュヌ派の額には、Vの字が刻まれている)。そしてそれに加え、額に「第3の眼」が描かれている。シヴァの第3の眼が一度開くと、そこからは世界を焼き尽くすほどの光線が放出されるという(第3の眼出現のエピソードは、パールヴァティーの項目を参照)。
 シヴァの持つ三叉戟も、重要なシンボルといえるだろう。それは普通、雷を表していると考えられるが、ヒマラヤの峯の象徴ともいわれる。また、彼の身体が青白いのは、牛糞を燃やした灰を身体に塗っているからだという。

 シヴァの住まいは、ヒマラヤ山脈にそびえるカイラーサ山である。その根元にはガンジス河が流れているとされている。仏教では「鶏羅山」と呼ばれるこの山は、標高約6700mの山として、実在している。
 そこで、シヴァはデーヴィーと呼ばれる数多くの妻達と暮らしている。しかし、もっとも有名なのはパールヴァティーだろう。そして、その間に生まれるのが、ガネーシャとスカンダである。また、シヴァの乗り物はナンディンという聖なる牛である。

 シヴァ神崇拝の、最も特徴的なのはリンガ崇拝だろう。リンガとは、抽象化されたシヴァの男性器である。大小様々なリンガがあるが、通常は、ヨーニと呼ばれる女性器を象徴した台座に乗せられ、崇拝されている。この様な生殖器崇拝は、本来のアーリア人にはなく、ヒンドゥー教の時代になり土着信仰と融合した物だろう。

 シヴァには無数の名前があることは前述した。以下、その有名な所を挙げて行こう。

 ・バイラヴァ(恐怖すべき者)
 ・ガンガーダラ(gaGgAdhara, Gangadhara)(ガンジスを支える者)
 ・マハーデーヴァ(偉大なる神)
 ・シャルベーシャ(有翼の獅子)
 ・パシュパティ(獣の王)
 ・ナタラージャ(舞踏王)

 など、その名は1000を越えるという。


●明王の「明」とは、「真言」(マントラ)を意味しており、すなわち、明王は、真言の力そのものを体現した仏である。代表的なものに、五大明王があり、

 ・不動明王(ふどうみょうおう)
 ・隆三世明王(ごうざんぜみょうおう)
 ・軍荼利明王(ぐんだりみょうおう)
 ・大威徳明王(だいいとくみょうおう)
 ・金剛夜叉明王(こんごうやしゃみょうおう)

 があり更に、

 ・無能勝明王(むのうしょうみょうおう)
 ・大輪明王(だいりんみょうおう)
 ・歩擲明王(ぶちゃくみょうおう)
 を加えた八大明王もある。その他、
 ・孔雀明王(くじゃくみょうおう)
 ・太元帥明王(だいげんすいみょうおう)
 ・烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)
 ・愛染明王(あいぜんみょうおう) などが、有名である。

●しばしば不動明王は、五大明王として奉られることもあります。

中央に不動明王(大日如来)
東方に降三世明王(阿しゅく如来)
西方に大威徳明王(阿弥陀如来)
南方に軍茶利明王(宝生如来)
北方に金剛夜叉明王(不空成就如来)
の位置関係で奉られ、怨敵調伏のときなどに用いられます。
(カッコの中はその如来が変じてそれぞれの明王になったとされています。)

●不動明王は悪魔を降伏するために恐ろしい姿をされ、すべての障害を打ち砕き、おとなしく仏道に従わないものを無理矢理にでも導き救済するという役目を持っておられ真言宗の教主「大日如来」の使者です。お姿は、目を怒らせ、右手に宝剣を持ち左手に縄を持つ大変恐ろしい姿をしておられますがそのお心は人々を救済しようとする厳しくもやさしい慈悲に満ちております。

●十三仏の初七日導師。世の中を明るくし、私達が正しい道を歩み、平安な暮らしが出来るようにと願い、災いから救う為に、いろいろな仏さまや神さまがおられます。そのたくさんの仏さまや神さまの代表が大日如来です。
そしていつも身近で迷いを絶ち、苦難から救い、楽しみを与えて下さるために、大日如来が姿を変えて現われたのがお不動さまです。お不動さまは老若男女、宗派を問わず信ずる人の心の内に住み、その人を護り、ご利益を下さいます。信ずる心のない人には、お不動さまを感じることはできないでしょう。それはちょうど電波が届いていても、受信機がなければそれを知ることが出来ないのと同じです。

●お不動さまを動物で現すと竜、物ならば両刃の剣、色ならば金または青黒となります。
お不動さまが右手に持っている剣を利剣といいます。正しい仏教の智慧で迷いや邪悪な心を断ち切りることを現しています。左手の綱は羂索(けんさく)といいます。悪い心をしばり善心をおこさせることを現します。
背中の炎は迦楼羅焔(カルラえん)といいます。カルラは毒をもつ動物を食べるという伝説上の鳥の名前です。この鳥の姿をした炎ということで、毒になるものを焼きつくすことを現します。
足下の岩は磐石(ばんじゃく)といって、堅くて大きな岩を指します。迷いのない安定した心を現します。お経では「金剛石に座し」と書かれていますから、巨大なダイヤモンドに座っていることになります。


●大日如来の教令輪身(きょうれいりんしん)であって、火焔を背にして右手に剣を取り、左手に縄を持って憤怒の姿をしていられます。中野不動尊のご本尊は両側に矜羯羅童子(こんがらどうじ)と制多迦童子(せいたかどうじ)の脇侍が立っています。
 不動明王の前で盛んに祈祷が行われるのは、不動明王には大威力があって難を除き、魔を降伏し、すべての人にわけ隔てなく利益を与えてくださるからです。また、人の死後は必ず最初に(初七日に)不動明王の導きをうけることは一般にもよく知られています。
 不動尊は何の神様ですか(どういうご利益があるのですか)というお訊ねをうけますが、不動尊のご誓願は広大無辺であって、しかも「無相法身(むそうほつしん)、虚空同体(こくうどうたい)」といわれますから、念ずる人の(祈願者の)願いによって、どんなご利益でもいただけるわけです。
 不動明王が火焔の中に住まわれるのは ”火生三昧”といって、衆生の煩悩を大智慧の火で焼きつくして、お悟りに導くことを本誓(ねがい)としていられるからです。また、不動明王の前でお護摩を焚くのは宗教的儀式作法であって、大願を成就せしめるためです。中野山でのお護摩には「塩木(えんぼく)」という特別の薪が用いられます。

●不動明王は観音・地蔵と並んで我々になじみの深い仏です。母のような微笑を浮かべる観音、のどかな雰囲気の地蔵と異なり、不動明王は忿怒の相を表していて、恐い感じの仏であり、山折哲雄氏は観音・不動・地蔵のセットが日本ではそれぞれ母・父・子のイメージの投影になっているのではないかと指摘しています。

(ただし実際には、この3仏を家族に当てはめるなら、父=観音、母=地蔵、子=不動の方が実態にあっていると思います。)

●「十九観」がその特徴であるとされます。
(1)大日如来の化身であること
(2)真言中にア・ロ・カン・マンの4字があること
   最も実際には普通に使われている不動明王の真言ナウマクサマンダ・バ
   ザラダン・センダマカロシャダ・ソハタヤ・ウンタラタ・カンマンには
   最後に「カン」「マン」が出て来ていますが、アとロは出て来ておらず
   「ア」は不動明王の本体の大日如来の種子、「ロ」は真言中の「ロシャ
   ダ」の頭のロのことでは、などと幾つかの解釈が出ているようです。
(3)常に火生三昧に住していること
(4)童子の姿を顕わし、その身容が卑しく肥満であること
(5)頭頂に七沙髻があること
(6)左に一弁髪を垂らすこと
(7)額に水波のようなしわがあること
(8)左の目を閉じ右の目を開くこと
(9)下の歯で右上の唇を噛み左下の唇の外へ出すこと
(10)口を硬く閉じること
(11)右手に剣をとること
(12)左手に羂索を持つこと
(13)行者の残食を食べること
(14)大磐石の上に安座すること
(15)色が醜く青黒であること
(16)奮迅して憤怒であること
(17)光背に迦楼羅炎があること
(18)倶力迦羅竜が剣にまとわりついていること
(19)2童子が侍していること
   この2童子は矜羯羅(コンカラ)童子・制咤迦(セイタカ)童子といいます。
   この他36童子・48使者を従えている者もあります。

●不動明王の信仰が広まったきっかけは、ひとつは平安時代初期の平将門の乱です。この時なかなか手に負えない平将門を調伏するために京都の高雄山神護寺から不動明王像を「借りて」関東に持って行き、成田の地で調伏の法を行いました。この像はなぜか京都に戻らず、そのまま現在の新勝寺の本尊として伝わっています。(新勝寺に伝わる伝説では京都に連れて帰ろうとしたがどうしても動かず、夢枕に不動が現れ、自分はこの地に留まって関東の守護者になると言ったということです)

そしてお不動さんを決定的に庶民に浸透させたのは鎌倉末期の元冦でした。この時は全国各地で敵国退散の呪法が行われ、その主役は不動明王でした。この時面白いことに日本軍を助けに「走って行く」不動明王の絵なども描かれています。これは「走り不動」と呼ばれるものですが、本来動かないはずのお不動さんが走って行くというのはなんとも逆説的です。

また、お不動さんは庶民信仰の中では疫病退散の仏としても信仰を集めています。山伏が里人に頼まれて病気治療の加持の護摩を焚く時も、しばしばお不動さんに祈っていました。また現代でも病を抱えたお年寄が平癒祈願に行くのに一番多いのは、お不動さんと薬師如来です。



●不動明王は八大童子と呼ばれる従者を従えている。
 実際にはその中でも代表的な矜羯羅童子(こんがらどうじ)と制咤迦童子(せいたかどうじ)という2人の従者を連れた3御体の姿で絵に描かれたり仏像に刻まれることが多い(不動三尊像と言われる)。

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