不動尊五大の文

一に金伽羅 二にせいたか 三に倶利伽羅四天が童子
忝くも不動明王のご尊体を
今この座に於いて拝し奉る頭には白蓮華を頂き
額には四海の浪をたたへ面には大かるえんのうの威徳を表し
内心には憐れみを垂れ給ふ

両眼には日月を見開き口には
阿吽の二字を含み両端(りょうずい)の御牙には天地和合とかみしめ
胸には三像の弥陀をたたみ
腹には観世音をこもらせ給い
腰には麻利支天をおさめ
御身には天の羽衣を着し方より裾へは
九篠曼荼羅の法衣(けさ)を召され
後ろには大火焔をかまへ普く法界に遍じ自他の罪障及び難障を梵焼し
前後には八大童子左右には三十六童子守護して奉る
足の下には大磐石を踏み沈め
落ち来る瀧の水は煩悩の垢を灌ぎ
昼夜六根懺悔一切経の務めを万世の人々に行なわせ給う
その徳煌々として現れ
ただ一心に願うものを救わんがために
左の御手に三像半の索(なわ)を持し悪魔障魔をからめとり
大磐石のその下に踏み沈め給う
また右の御手には宝剣を持し
この宝剣には一々諸神こもらせ給う
きっさきの八分は石清水正八幡大菩薩
焼刃は倶利伽羅不動明王
三つ頭は愛宕三社大権現
せっぱはばきは阿吽の二つ是鹿島香取の大明神
つばの丸さは十五夜の満月を表し
表の柄節三十三裏の柄節三十三
これ日本六十余州大小の神祇をこもらせたまい
九万八千の金剛童子金峰大権現を治め
表の目くぎは金剛界
裏の目くぎは胎臓界
縁頭は陰陽の二つ
これすなわち
日天尊月天尊中にもあらき一におやざめは宵の明星明けの明星となる
この利剣を以って三界四天の御前いかなる悪魔障魔といえども
現在現世に切り拂い給う
すなわち御身は青黒にして
火生三昧に住し
大忿怒の形を現じたまうといえどもその住所はなし
ただ衆生の心に従って利徳を成し
諸求円満ならしめ給うなり

南無帰命頂礼大日大聖不動明王四大八大諸忿怒尊

(なむきみょうちょうらいだいにちだいしょうふどうみょうおう
しだいはちだいしょふんぬそん) 三反