羯磨曼荼羅 (かつままんだら)

東寺講堂に配置される二十一体の羯磨曼荼羅(かつま・立体曼荼羅とも呼ぶ)

曼陀羅を立体化したものを羯摩曼陀羅(かつままんだら)という。

空海は密教教学を駆使して、東寺講堂に日本で初めて羯摩曼陀羅を誕生させた。
空海没後4年を経た承和6年(839)6月15日に最終的に完成し、開眼されたものである。

講堂には、如来、菩薩、明王と三つに大きく分けられ、それぞれ5体ずつ15体が並ぶ。その仏達を取り囲むように四天王、帝釈天、梵天と6体、あわせて21体が配されている。

東寺講堂内部の諸尊像の配置

  平安京造営とともに造られられ、西暦823年空海に勅給され、真言宗の根本道場と
  なりました。金堂は、奈良時代最も信仰が一般化していた「七仏薬師像」。講堂は、
  空海が直接構想し、仏像を配置しました。いわゆる羯磨曼荼羅です。833年に建設が
  始まりますが、839年の開眼供養には間に合わず、835年空海は亡くなっています。

  羯磨曼荼羅は、21体の仏像を空間的に配置し、大日如来を万物の根源として、
  壮大な真言密教の宇宙観を表現したものとされています。

  その配置は、不空訳『仁王経』、『仁王経儀軌』や『金剛頂経』がもとになっています。
  また、興味深いのは『
攝無礙大悲心大陀羅尼經』(補陀落海会軌)にある「三輪身説」
  (さんりんじんせつ)といわれる考え方です。

●「三輪身説」 (さんりんじんせつ)

    ☆自性輪身(じしょうりんじん)      五智如来は、窮極の悟りの境地
       釈迦のさとりの内容を理論的に推し進めて、最高のものとしたほとけさま
       如来  「実の道に乗じり正覚を成ずる。」 
        完全に開いた蓮華に結跏座(足の裏を上にしたあぐら)で、衣の端を持つ。

    如来群  五仏とは
               中央の大日如来
                     智賢印(生仏一如 迷悟一体)
               東方のしゅく(あしゅく)如来
                     触地印(清らかな信仰心を啓発する)
               南方の宝生(ほうしょう)如来
                     与願印(衆生利益)
               西方の無量寿如来(むりょうじゅ)(阿弥陀如来)
                     弥陀定印(大慈大悲の智徳)
               北方の不空成就(ふくうじょうじゅ)如来
                     
施無畏の印(無明悪魔を払い万法成就を示す)
                                            の五仏である。
                          
                       不空成就如来          
 
        西   無量寿如来     大日如来       阿しゅく如来   

                        宝生如来
                          

    ☆正法輪身(しょうほうじんりん)     五菩薩は、衆生に対する対応の形態
      菩薩 「たで覚有情である」ほとけさま。
      すばらしい智を以って、覚を求め向上しようと努力し、愛情すなわち慈によって、
      有情(わたしたち)を導化する慈悲の相。

        菩薩群
      講堂の諸尊のむかって右の一群を構成する。中尊の金剛波羅密多菩薩を除く4像が
      創建当初のものである。五大菩薩は人々を救済するために、五智如来が菩薩(慈悲の姿)に
      化身したものである。は江戸時代の後補。

              金剛宝(こんごうほう)菩薩 
                   
与願印(福徳)  宝を承る形
              金剛法
(こんごうほう)菩薩
                   
蓮華を咲かそうとする仕草  未敷(みふ)蓮華を握る
              金剛業
(こんごうごう)菩薩
                   
施無畏印(迷いや悪魔を除き、さとりをひらく) 諸仏供養の形
              金剛薩た
(こんごうさつた)菩薩
                   
五鈷杵   五鈷鈴
              金剛波羅密多菩薩

                   説法印(般若の智恵で諸仏を悟らせる) 

      尊名には全て金剛という二字が頭についている。これは灌頂名と言い金剛界の灌頂を
      授かった証しである。聞き慣れない尊名であるが、金剛法菩薩は観自在菩薩、金剛利
      菩薩は文殊菩薩と言ったように、よく知られた菩薩も多い。

                          
                       金剛業菩薩
                       (金剛夜叉)
          西  金剛法菩薩  金剛波羅蜜菩薩   金剛薩った菩薩 
             (文殊師利)
                       金剛宝菩薩
                       (金剛蔵王)
                          
    ☆教令輪身(きょうれいじんりん)
       末世の難化(なんげ)の衆生救済のため、忿怒相をもって五智如来の化身
       として、五大明王。

            明王群
              不動明王坐像
               
三鈷剣(煩悩を断ち切る) 羂索(煩悩に縛られている衆生)
              降三世明王立像(こうざんぜみょうおうりゅうぞう)
               
救世の印 大自在天と妃を両足で踏んでいる 六臂
              軍荼利明王立像(ぐんだりみょうおうりゅうぞう)
            
大瞋印(蛇形で一切の悪障を除く) 六臂
             大威徳明王騎像(だいいとくみょうおうきぞう)
            牛に乗っている  六臂
             金剛夜叉明王立像(こんごうやしゃみょうおうりゅうぞう)
                 六臂五鈷杵・五鈷鈴 剣・索 弓・矢)
                         
                      大威徳明王

            軍茶利明王   不動明王   金剛夜叉明王

                      降三世明王

   ●上の、配置は本来、曼荼羅の考えからすると上の重なっているのでしょう。
     そうして、その周りを「天部」が守っている構造です。

                          
                         広目天  
 
        西   増長天  帝釈天        梵天  多聞天   

                         持国天
                          

梵天・帝釈天
梵天・帝釈天は、それぞれインド古代神話の創造主ブラフマンと戦闘の神インドラが仏教にとりこまれて
仏法の守護神となったものである。

この二尊は講堂の立体曼陀羅の両端に配され、四天王と共に如来・菩薩・明王を守護している。

               梵天坐像(ぼんてんざぞう)
              帝釈天半跏像
(たいしゃくてんはんかぞう)

四天王立像
堂基壇の四隅に配され、居並ぶ仏たちがつくりだす仏法の世界を守護しているのが、この四天王たちである。
インド古代の神であったが、仏教に取り込まれ、仏教の宇宙観で世界の中心とされる須弥壇の四方を守って
いるとされる。一般には武装した勇敢な姿で表される。

               持国天(じこくてん)
               増長天
(ぞうちょうてん)
               広目天
(こうもくてん)
               多聞天
(たもんてん)

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