結縁灌頂(秋)    H18.10.1-2

 10月1日(日)

 折りしも、秋雨が降っています。驟雨(しゅうう)。南海電車高野線は、橋本駅を過ぎ
 学文路(かむろ)のお大師様が小高い山の上に見えてくると、彼岸花も色あせて、
 そろそろ木々の枝先から赤く色づいています。

 九度山、小沢から極楽橋。電車を降りてケーブルカーに乗り換えます。時間は、午前10時。
 結構多くの方が、お山に上ります。

 今日は、念願の結縁灌頂が目的です。様子を見て、今日にするか、または明日の朝一番に
 しようかと、不安の中も気持ちの高揚は抑えられません。

 結縁灌頂は、お大師様が唐から帰ってきて、初めてなさった儀式です。京都の高雄寺でしたか。
 み仏と縁を結ぶのです。在家ができる儀式ですね。わたしは、この灌頂を受けてやっと仏教徒
 と仏さまに認めてもらうものと思っています。

 ※10月1〜3日結縁灌頂  午前8時 大伽藍 金堂
  お大師様は唐の恵果和尚より金剛・胎蔵の両部の大法を学ばれ、帰朝されてからは弘仁三年(812)十一月に京都の高雄山寺にて金剛界、続いて十二月に胎蔵潅頂を厳修されました。潅頂の種類は多様で、中でも僧俗を問わずどなたでも金剛・胎蔵の諸仏と縁を結ぶことが出来る潅頂を特に「結縁灌頂」と言います。受者は印と真言を面授され、そして両目を覆われます。印の先には花を授けられ曼荼羅へと導かれます。そして花を曼荼羅に投ずる事によって曼荼羅の諸仏と「仏縁」を結びます。これを「投花得仏」と言います。次に如来の智慧の水を阿闍梨様より注いでいただきます。そうする事によって煩悩の闇をさまよっている我々に道しるべを与えて頂きます。この時を機会に、本来私たちの心の中に備わっている仏の「眼」を次第に開眼する事が出来るのです。
                                        (高野山金剛峰寺のHPより)
648-0294 和歌山県伊都郡高野町高野山132  総本山金剛峯寺内 法会課 0736-56-2011(代)



 もう仏教に興味を持ち、何年も聞きかじりの耳年増です。たくさんのお寺におまいりはしていますが、
 自分の仏とご縁を結ぶ儀式は、初めてです。

 例年春5月3.4.5日が、胎蔵界の結縁灌頂です。秋10月1.2.3日が、金剛界の結縁灌頂です。
 両方受けないと、両部界のみ仏と結縁できませんね。何回受けてもいいようです。

 バスで、消防署前で降りて、金剛峰寺を過ぎて大伽藍へ。大塔で受付しています。
 え!今の受付で、灌頂は午後5時からと。まだ、朝の10時半ですよ。

  

 宿坊には、早めに入ってゆっくりしたいし、食事は5時30分が基本だし。今日は無理だ。
 明日にしよう。時間は、たっぷりあるから。

 久しぶりに、大伽藍のすべてのお堂をお参りしよう。そして、霊宝館の愛染様にも会いたいし。

 金堂には、大きな垂れ幕で「結縁灌頂」とかかっています。たくさんの方が、集っています。
 前には、テントがあって、手荷物預かり所です。横を通って、六角堂。奥に狩場明神社。

  

 西塔です。雑踏から誰もいない空間です。

  

 孔雀堂。私たちのすべての毒を食い尽くしていただきます。

 

 大師堂では、ゆっくり心経を。雨です。小ぬか雨。参拝が、絶えません。
 そうそう、前の三鈷の松は後ろを通らないとね。(隆蓮房さんの教えです。)

  

 ぐるっと金堂を一周して、中門から霊宝館に向かいます。
 秋の行楽シーズンですが、団体の灌頂待ちの方々は、みやげ物屋さんの食堂で休憩中ですね。
 町は、空いています。

 

 さあ、霊宝館です。靴を脱いで、み仏にご挨拶です。
 新館から。大きなお不動さんが、お迎えです。だれもいない。愛染様の前のいすに座って、
 心いくまでご対面ですよ。この瞬間、時間はたゆたく流れます。回りを多くの仏に包まれるのは、
 無上の喜びです。みんな、見ていてくださるから。

 また来ますと、つぶやいて本館に向かいます。

 入ったところの空間の左右の壁に、両界曼荼羅。ちょうど真ん中に立って、気をいただきます。
 胎蔵界曼荼羅から足元を回って金剛界曼荼羅に。頭を通って回っていく気。全身を包み込む
 渦。手を合わせ、瞑想です。

 最初の部屋は、曼荼羅世界です。いろいろな曼荼羅です。なんと「愛染曼荼羅」が展示されていました。
 帰りに、「愛染曼荼羅」の写真がないか探しましたが、残念。孔雀明王の絵はがきを買いました。

 次の部屋が、お大師さまゆかりのもの。紺紙に金・銀墨のお写経や聾瞽指帰(ろうこしいき)。
 高野山開闢の絵巻など。明神白と明神黒の二匹の犬ですが、あれは紀州犬ではないなあと思いました。
 実は、我が家には紀州犬さくらがいます。鼻の頭が、「うめぼし鼻」といって、赤いのですが黒いまだらです。
 尻尾は、L字にまがっています。背中に、薄い茶色の毛が混じります。これが、伝統的な紀州犬です。



 ぼっとしたまま、出てきました。霊宝館は、博物館というよりも、仏教の館です。できるだけ多くの人に
 観てもらいたいなあ。

 雨は、こ止みなく降っています。緑が深く、雨に洗われて鮮やかに雨粒を垂らしています。
 去りがたい思いのままに、大師教会から高野山大学の方に。今日は、創立120周年記念式ですって。

 またあの酒屋さんの隣の食堂に入りました。やっぱりうどんですよ。うどん=四国=遍路=お大師様。
 お参りには、いつもうどんです。

 

 さて、食後には「みろく石」ですね。やっぱり「くるみ餅」とほうじ茶。中本仏光堂で、いろいろ物色です。
 ご真言のテープが欲しかったのですが、なかったです。でも、常用経集や携帯線香入れ。そうそう
 プラスチックの愛染様像を発見。(840円)。本物の仏像を見ますと、10cmほどのお大師さまで、10万円。
 気持ちですよね。このプラスチック仏像は、シリーズであります。お不動さんがなかったのが残念でした。
 いま、我が家の自作手彫りお薬師の隣におられます。

  

 さあ、早めに宿坊に向かいます。まだ2時前ですが。

 もう二回目ですから、勝手がわかっています。今回は、内湯のある部屋です。
 一歩も出ません。ははは。食事まで時間がありますから、またまたお写経をお願いしました。
 床の間の香炉にも、お香を焚いていただき、雨音を聴きながら、ゆったりとお写経します。
 お経は、雨粒が落ちているように読むのだと聞いたことがあります。書き終わったお写経を
 雨だれのように、ゆっくり読みました。

 

 日曜日の夜、「山内一豊」が終わると就寝です。明日にわくわくしながら、早寝しました。


 10月2日(月)

 朝、6時15分の放送を待って、ご本堂のお勤めです。なんと、30名以上のお泊りでした。
 あの佐伯僧正の声明です。理趣経が心地いい。後ろの方から女性の声で、しっかりした読経が聞こえます。
 すごいなあなんて思いながら、お勤めしました。そして、また奥の厨子にいらっしゃる愛染様にお参りです。

 すでに部屋には、朝食の準備がされています。ちょっと急いで食べて、7時30分過ぎに部屋を出ます。
 荷物は、宿坊で預かっていただいて、今日の結縁灌頂の受付に向かいます。(宿坊で、入壇券3000円が
 買えます。)

 

 やっぱり雨ですよ。大伽藍、東塔を過ぎ愛染堂・不動堂から大塔です。すでに20人くらいの人が、
 順番に座って受付を待っています。これだったら8時の一番の灌頂がうけられるかなあと思ったのですが。
 受付が始まると、お一人で20枚とか、6枚とか。そう、代表の人がきているだけ。はは。結局、10時40分の
 3回目の受付でした。昨日からの番号でしょうね。954番です。
 
 時間があります。金剛峰寺にお参りにいきました。拝観時間は、朝8:30からです。まだ8時45分です。
 おそらく9時から法話があるだろうと入館して、すぐ奥の広間に向かいます。お茶をいただき、待っていました。

    

 現れた講師の僧に驚きました。なんと、同じ宿坊に泊まっておられた尼さんです。朝の勤行の時に聞いた
 理趣経の方。顔を合わせてすぐに、確かご一緒でしたよねって話になりました。ご友人とご一緒で、その方は
 長野県の方でした。お話では、福井県永平寺での体験修行で知り合ったとか。お子様が、兵庫国体に出られる
 応援の機会に初めて高野山に上られたとのことです。

 いい法話でした。
  人の心には、月輪がある。でもそれが流れる雲で隠されている。その雲をコントロールすることによって、
  月輪を輝かせよう。そんなお話でした。

 法話のあと、その尼僧は参加者一人ずつにお話に回られて、私がそのお友達と話しているところに来られて
 ひとしきりお話しました。そろそろ、灌頂の集合時刻(10:30)になりますから、お別れしました。

 お坊さんって、どうしてあんなに爽やかというか、吹っ切れた明るさを持っておられるのだろうか。
 屈託がないと言えば、失礼ですがそんな感じです。また、身を守ったり体裁や建前、警戒といった俗世間の
 常識が揺らいでしまいましたよ。

   

 大伽藍の金堂に来ました。大きな垂れ幕です。マイクで集合の放送です。靴を脱いで、金堂左の濡れ縁に
 回ります。順番に並んでいきます。一回に40人くらいですね。整列して、諸注意を聞き、例の目隠し用の紙
 (大日如来のお姿の朱印)を左手にかけていただきます。待つことしばし。折りしも、強い雨がザーと降ってき
 ました。待ち時間に、案内の僧が高野の歴史を話してくださいました。ちょうど目の前に、三鈷の松です。
 弘法大師が中国から投げた三鈷がひっかかっていた松です。いい雰囲気。

 さて、順番がきました。中に入ります。最初の部屋では、授戒を受けます。何回「南無大師遍照金剛」と 
 ご宝号を唱えたでしょう。お坊さんが壇にのぼり、全員で懺悔文・十善戒を唱えて授戒です。そして、
 印を教えていただき、次の部屋。
 
 いよいよ目隠ししていただき、三昧耶戒の真言を教えていただき、ここからはエンドレス(説明のお坊さんの
 ことば)にご真言を唱え続けます。散華の枝を印に挟んで、前の人の背中にくっつけてすり足で進みます。

 順番が来ました。「前かがみに華を落として」という声です。そして目隠しがはずされます。金剛界曼荼羅の
 上に落とした?華があります。曼荼羅中央の成身会の「大日如来」の上に。
 弘法大師が、中国で恵果僧都の灌頂で両部界曼荼羅の大日如来に落ちたという故事に倣い、皆さん
 大日如来だそうです。本当なら、曼荼羅諸仏のどなたかに落ちて、その仏とご縁を結ぶのもそれでいいかと
 も思いますが、すべての仏が大日如来と一体であると解釈すれば、「大日如来」でいいですよね。

 一連のご説明をいただき、格の高い僧のところに案内されます。そうして、冠を被らされて、五鈷杵を手に
 持たせていただき、今大日如来とご縁を結びましたとお祈りしていただき、頭に聖水をいただきます。
 これは、お釈迦様が象に乗り、上からたらし、象の鼻を伝って垂れる聖水だと、宿坊の方に聞いていました。
 すかさず、鏡を見せられて、「これが、今の灌頂後のあなたの顔です」と。ただただ、ありがとうございますと
 しか、言えませんでした。
 
 金堂の構造上、大体どの辺りを通って行ったかわかります。ご本尊の前が、投華の場所ですね。そして
 お水を頂いたのが、胎蔵界曼荼羅付近。金堂右手を回って裏の出口に向かいます。八祖の掛け軸を
 めぐって出ます。

 出口のところで、目隠しに使った紙の大日如来のお姿の上に、今度は梵字の三昧耶印を重ねていただき
 血脈と投華もいただきました。

 

 ぼーとなって外にでます。前が大師堂。いやあ、1時間かかりました。外にでて宿坊に預けた手荷物を
 もらいに帰ったのですが、途中をよく覚えていません。

 宿坊での話で、春の胎蔵界の灌頂はすごく混み合うので、連泊を考えてきてくださいとのことです。
 5月の連休ですからね。ずっと昔から日は決まっているので、変更できないんですよって。

 さて、結縁灌頂も済ませて、やっと本物?の仏教徒として、奥の院のお大師さまに報告とお礼参りです。
 バスに乗りましょう。雨は、ずっと降っていました。奥の院まで。最近は、一の橋からいつも歩きますので
 ちょっと後ろめたいですね。

  あじみ地蔵様。

 この日のために書いた金墨の写経を奥の院に納めました。未熟な字ですが、気持ちは十分です。

 裏の御陵前で、しっかり勤行しました。地下のご廟の絹の向こうには、今日は「骨大師」(元三大師)
 がいらっしゃった。見る度に、違って見えます。

   天台宗 比叡山横川中堂 元三大師の「骨大師」のお札
 こころに映る仏の姿を絵に描けといわれて描いたとか。おみくじの元祖といわれます。

 いいお参りでした。時間が下界と違います。空間もですね。
 こうして、私の結縁灌頂は終了しました。いや、始まりました。来年は、5月に胎蔵界。何度受けてもいい
 そうです。だからこそ、始まりなのです。仏の世界で、仏に認めていただいたと思っています。だからこそ、
 これからの日々にその実践が問われるのです。「生かせ、いのち」という横断幕が、金剛峰寺駐車場に
 かかっています。慈悲とは、ひとに・われに優しさと慈しみを持つことです。早速、今から実践していく
 努力をしようと帰路につきました。

 おん さんまや さとばん 南無大師遍照金剛


■愛染様  ■福智院・金剛三昧院 ■17年2月 ■18年1月 
家から高野山へ(1) (2) (3) (高野街道18年3月) ■18年8月(町石道)  
■高野山遥拝所(隆蓮房さんのHPリンク)■金剛峰寺(公式サイト)