原 文 真言諸経要集 | 訳 『密教入門』大栗道榮阿闍梨 |
身口意(しんくい)業 常に顛倒(てんどう)して 誤って無量不善の業(ごう)を犯す 珍財を慳悋(けんりん)して施を行ぜず 意(こころ)に任せて放逸にして戒を持せず しばしば忿恚(ふんに)を起して忍辱(にんにく)ならず 多く懈怠(げだい)を生じて精進ならず 心意(しんに)散乱して坐禅せず 実相に違背して慧(え)を修せず 恒に是の如くの六度の行を退して 還(かえ)って流転三途(るてんさんず)の業を作る 名を比丘(びく)に仮(か)って伽藍(がらん)を穢(けが)し 形を沙門(しゃもん)に比して信施を受く 受くる所の戒品(かいぼん)な忘れて持せず 學すべき律義は廃して好むこと無し 諸佛の厭悪(えんあく)したまう所を慚(は)じず 菩薩の苦悩する所を畏れず 遊戯笑語(ゆうげしょうご)して 徒ら(いたずら)に年を送り 諂誑詐欺(てんのうさぎ)して空しく日を過ぐ 善友(ぜんにゅう)に随がはずして癡人(ちにん)に親しみ 善根(ぜんごん)を勤めずして悪行を営む 利養を得んと欲して自徳を讃じ 名聞(みょうもん)を求めんと欲して他罪を誹(そし)る 勝徳(しょうとく)の者を見ては嫉妬(しっと)を懐き(いだき) 卑賤(ひせん)の人を見ては驕慢(きょうまん)を生じ 富饒(ぶしょう)の所を聞いては希望(きぼう)を起す 貧乏(ひんしゅ)の類を聞いては常に厭離(おんり)す 故(ことさら)に殺す有情(うじょう)の命(みょう) 顕は(あらわ)に取り密かに盗る他人の財 触れても触れずして 非凡行(ひぼんぎょう)を犯す 口四意(くしい)三互(さんたがい)に相続し 佛を観念する時は攀縁(はんねん)を発し(おこし) 経を読誦する時は文句を錯る(あやまる) 若し善根を作せ(なせ)ば有相(うそう)に住し 還って輪廻生死(りんねしょうじ)の因と成る 行住坐臥(ぎょうじゅうざが)知ると知らざると犯す所の是(かく)の如くの無量の罪 今三宝に對して皆発露(ほつろ)し奉る 慈悲哀愍(じひあいみん)して消除せしめ賜え 南無 慚愧懺悔(ざんぎざんげ) 無量 所犯罪(しょぼんざい) |
1.われは懺悔する。妄想にとりつかれて、もろもろの罪を犯してきました。 2.身と口と意(こころ)の行いは、つねにひっくりかえり、多くの悪行を誤って犯してきました。 3.財産を惜しんで人に施さず、気の向くままに、ふしだらな生活をし、戒めなどまったく守らなかった。 4.よく腹を立て、我慢をしない。怠けることばかり考えて、少しも努力をしない。 心はいつも乱れているが、座禅などしたことがない。 5.道理にはずれているのに、智慧を磨こうともしない。 6.六波羅蜜行などしたことがないのは、かえって地獄行きのもとをつくっているのだ。 7.僧侶の名を借りて寺院を汚し、僧侶の格好をしてお布施をもらっているのだ。 8.授けられた戒律は、とっくに忘れてしまい、学ぶべき修行は嫌いになっている。 9.諸仏が嫌がっていることを恥とせず、菩薩たちを悩ませていることを恐れない。 10.遊びまわり、冗談を楽しんでいるうちに年をとり、人に心にもないお世辞や、嘘をいっている間に、むなしく日は過ぎていく。 11.善き友を避けて、愚かな友と親しみ、善いことをしようとしないで悪いことをしてしまう。 12.名誉がほしいので自画自賛をし、徳の高い人を見ては、ねたましく思う。 13.自分より劣った人を見ては高慢になり、金持ちの暮らしを聞いてはあこがれ、貧乏な暮らしを聞いてはおぞましく思う。 14.過失で殺すも殺意を持って殺すも殺人にかわりなく、強盗にしてもコソ泥にしても盗人にかわりがない。 15.触れても触れなくても、不倫な行為は不倫である。 16.悪い言葉や悪い心のはたらきが互いに重なって、仏を観想しても心が落ち着かず、経を読んでも間違える。 17.もし善いことをしても、その結果を期待するから、かえって迷いの世界に入るもととなる。 18.毎日の暮らしのなかで、知らないうちにたくさんの罪を犯している。 いま、仏・法・僧の三宝のおん前で告白いたします。 なにとぞ慈悲のお心でおゆるしください。 ここに、すべてを懺悔いたします。自らの行いと、言葉と、心の動きによってできた罪を、わたしはすべての人に代わって、懺悔いたします。 なにとぞ、すべての人が悪行の報いを受けませんように。 |