瑠璃の仏尊

 薬師如来の巡礼を重ねて、いろいろな疑問を持つ中で、
「いったいお薬師さまは、誰なんだろう?」という思いを持つようになりました。

たとえば、阿しゅく如来の忿怒の異形が、降三世明王であったり、大日如来の忿怒の
お姿が不動明王であるのなら、いろいろな仏がその姿を変えて、私たちに様々な教え
や戒めを見せてくれているはずです。

とすれば、薬師如来はどなたであり、別の姿で現れているのはどの仏尊なのでしょう。

●お薬師さんは、一般的には「薬師三尊」といわれる仏像配置ですね。


                                  

広目天      多聞天
毘伽羅(釈迦)
金毘羅(弥勒) 照頭羅(金剛手)
和耆羅(勢至) 真陀羅(普賢)
 西 彌伽羅(阿弥陀) 月光菩薩 薬師如来 日光菩薩 摩休羅(薬師 )   東
安陀羅(摩利支天 ) 婆耶羅(文殊 )
摩尼羅(観音) 因特羅(地蔵)
宗藍羅(虚空蔵)
増長天     南 持国天

                                  
  ☆薬師如来、日光・月光菩薩、十二神将、四天王の19体の仏像配置が、基本です。
    一部、帝釈天・梵天がいたり、無い場合もありますね。
  ☆なぜ、仏像の配置に注目するかといえば、これらの配置は『薬師本願功徳経』を基本に
   登場する仏像群です。それぞれの役割を担っているわけです。

  それぞれの仏の功徳や教えを知り、共通点を探っていけば、根本の存在が分かるのでは
  と考えるからです。ですから、もっと深めていって、種字(梵字で仏の功徳を表したもの)を
  並べていくと本当の教えが、見えてくるはずです。

  今度は、種字曼荼羅の勉強が必要ですね。とにかく、方角や位置を頼りにみることにします。

●大きな手がかりは、京都東寺の講堂にある仏像配置だと思います。

  平安京造営とともに造られられ、西暦823年空海に勅給され、真言宗の根本道場と
  なりました。金堂は、奈良時代最も信仰が一般化していた「七仏薬師像」。講堂は、
  空海が直接構想し、仏像を配置しました。いわゆる羯磨曼荼羅です。833年に建設が
  始まりますが、839年の開眼供養には間に合わず、835年空海は亡くなっています。



  羯磨曼荼羅は、21体の仏像を空間的に配置し、大日如来を万物の根源として、
  壮大な真言密教の宇宙観を表現したものとされています。

  その配置は、不空訳『仁王経』、『仁王経儀軌』や『金剛頂経』がもとになっています。
  また、興味深いのは『
攝無礙大悲心大陀羅尼經』(補陀落海会軌)にある「三輪身説」
  (さんりんじんせつ)といわれる考え方です。

●「三輪身説」 (さんりんじんせつ)
    
    ☆自性輪身(じしょうりんじん)      五智如来は、窮極の悟りの境地
                     
                  不空成就如来          
 
   西   無量寿如来     大日如来       阿しゅく如来   

                   宝生如来
                     

    ☆正法輪身(しょうほうりんじん)     五菩薩は、衆生に対する対応の形態

                  金剛業菩薩
                  (金剛夜叉)
        金剛法菩薩  金剛波羅蜜菩薩   金剛薩った菩薩
        (文殊師利)
                  金剛宝菩薩
                  (金剛蔵王)

    ☆教令輪身(きょうれいりんじん)
       末世の難化(なんげ)の衆生救済のため、忿怒相をもって五智如来の化身
       として、五大明王。

                  大威徳明王

        軍茶利明王   不動明王   金剛夜叉明王

                  降三世明王

●上の、配置は本来、曼荼羅の考えからすると上の重なっているのでしょう。
  そうして、その周りを「天部」が守っている構造です。

                     
                    広目天  
 
   西   増長天  帝釈天        梵天  多聞天   

                    持国天
                     

●次に、胎蔵界曼荼羅の中台八葉院の諸仏を見ます。

                 天鼓雷音(てんくらいおん)如来(北)
        観音菩薩(西北)                 弥勒菩薩(東北)
   阿弥陀如来(西)          大日如来         宝幢(ほうとう)如来(東)
       文殊菩薩(西南)                 普賢菩薩(東南)
                 開敷華王(かいふけおう)如来(南)

 タントラ経典 ゴル寺 19'th末
日本にはないようですが、ネパール・チベットでは今も、「薬師如来曼荼羅」は残っています。

●『金剛頂経』の五相成身観(ごそうじょうじんかん)を見ますと、中台八葉院の八仏と合わせて、

前5識 成所作智(じょうそさち)  (不空成就如来の智恵)
成所作智は、眼耳鼻舌身の五感を正しく統御し、それらによって得られる情報をもとに、
現実生活を悟りに向かうべく成就させてゆく智恵である。
      ↓
菩提心を発して(宝幢如来)
      ↓
第6識 妙観察智(みょうかんざっち)  (阿弥陀如来の智恵)
妙観察智は、万物がもつ各々の個性、特徴を見極め、その個性を活かす知恵である。(阿弥陀如来)
      ↓
修行をし(開敷華王如来)、
      ↓
第7識 平等性智(びょうどうしょうち)  (宝生如来の智恵)
平等性智は、森羅万象を平等に観る智恵で、万物が大日如来の化身であり、平等の仏性を
もつ事を覚る智恵である。
      ↓
やがて菩提(悟り)に至り(阿弥陀如来)、
      ↓
第8識 大円鏡智(だいえんきょうち)  (阿しゅく如来の智恵)
大円鏡智は、鏡が一切の事象をありのままに分け隔てなく映し出すように、一切をあるがままに
受け入れ、分別をしない智恵である。
      ↓
涅槃の境地に向かう(天鼓雷音如来)
      ↓
第9識 法界体性智(ほうかいたいしょうち)  (大日如来の智恵)
法界体性智は、永遠普遍、自性清浄なる大日如来の絶対智であり、他の四智を統合する智恵
である。

心の発展過程(発心→修行→菩提→涅槃)が、そのままに曼荼羅という形をとり、
それが自らの心の内の障害と外からの要因の防御という意味を持って、地獄があり
明王や四天王、力王、などが存在する。(外院)

●それでは、「薬師如来」は、なにをあらわしているのか。

 薬師如来が、菩薩時代に立てた十二大願により人々を救うという点は、阿弥陀如来の四十八請願
 とも同様。しかし、阿弥陀が来世での安らぎを約束するのに対して薬師は現世での安らぎを求める
 点が異なっています。

 また、阿しゅく如来の東方「妙喜世界」が、薬師如来の東方「浄瑠璃世界」とまったく同じものとも
 いわれます。これらを、どう考えればいいのでしょう。

 ☆わたしは、これを時間の軸における推移と考えます。(時間軸)

       過去      ⇒      現在      ⇒     未来

     阿しゅく如来         薬師如来           弥勒如来
                              阿弥陀如来
                       観音菩薩
                       普賢菩薩
                       文殊菩薩 他

 ☆また、それが方角として                (水平軸)

      東 →・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・→ 西

 ☆心の発展過程として、                 (観念軸)

     発心   →   修行   →   菩提   →   涅槃
 
 ☆この過程において、様々な仏が、姿・形を変え、衆生を導き、守り、諌める役割をはたします。
                                (垂直軸)
     天部         明王             菩薩            如来

   梵天・帝釈天  不動明王・愛染明王  観自在菩薩・金剛さった   大日如来

●「釈迦如来」は、どこに位置するのでしょう。前述の各軸を包含する、「宇宙」を説明する
 「語り部」でしょうか。もしくは、私たち「衆生」の前に進む「原動力」としての「発心」そのもの
 でしょうか。

 空海は、真言密教において、「大日如来」をすべての中心に据えました。中心というのは、
 核である上に、総括であり、統括であり、すべてを包括する宇宙です。

 また、その方向は拡散であり、集約であり、根元であるとともに終着です。

●結論として、私が納得したのは、
 信仰として、今自分が求めているものに答えてくれる仏を、思えばいいのです。
 そうすれば、上記の軸に乗り、導かれるのですね。

 わたしは、いま「お薬師さん」を思っています。
 何かの因縁で、西国三十三箇所巡りで「観音菩薩」の33のお姿を垣間見ました。
 そうして、薬師四十九ヶ寺を巡っています。そのうちに、愛染明王を知りました。

 また、十三仏を巡ります。どうも、無意識に一つの深まりの方向がきまってきたようです。

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