写経のすすめ

実は、四国八十八箇所巡礼にでる準備のため、いろいろ調べていて、やっぱり写経を持っていって
奉納したいと思うようになりました。

そこで、あの「佐藤文庫」で教えてもらいました。http://jin.zen.or.jp/~sato/bunko/
光明院    http://www5e.biglobe.ne.jp/~komyoin/ 写経用紙

 ご自宅での写経(般若心経)の作法 [例 大覚寺]

  1.手を洗い、口をすすいで身を清める。

  2.香をたき、室内を清める。

  3.墨をすり、心をしずめる。

  4.合掌礼拝


 5.開経偈

無上甚深微妙(むじょうじんじんみみょう)の法は

百千万劫(ひゃくせんまんごう)にも遭遇(あいあ{お})うこと難し

我いま見聞(けんもん)し受持(じゅじ)することを得たり

願わくば如来(にょらい)の真実義(しんじつぎ)を解(げ)せん


 



            6.表白読誦

                 それ佛法(ぶっぽう)はるかに非(あら)ず
                心中(しんじゅう)にして即ち近し
                真如(しんにょ)外(ほか)に非ず
                身をすてて何(いづく)んか求めん
                迷悟(めいご)我(われ)に在れば
                発心(ほっしん)すれば即ち到る
                明暗(みょうあん)他(た)に非ざれば
                信修(しんしゅ)すれば忽(たちまち)に証す
                弘法大師曰(のたま)わく
                文殊(もんじゅ)の利剣(りけん)は(な)諸戯(しょけ)を絶つ
                覚母(かくも)の梵文(ぼんもん)は(な)調御(じょうご)の師なり
                チクマンの真言(しんごん)を種子(しゅじ)と為(す)
                諸教(しょきょう)を含蔵(がんぞう)せる陀羅尼(だらに)なり
                無辺(むへん)の生死(しょうじ)は何(いか)んが能(よ)く断つ
                唯(ただ)禅那(ぜんな)正思惟(しょうしゆい)のみあってす
                尊者(そんじゃ)の三摩(さんま)は仁(にん)譲(ゆず)らず
                我れ今(いま)至心(ししん)に懺悔(ざんげ)し
                謹(つつし)みて般若心経を写経し奉(たてまつ)る   )

                大覚寺写経では、5.6を申し上げ、
                次のは、写経の後で回向文の前にあげる。

  5.願文読誦

  真言は不思議なり、観誦(かんじゅ)すれば無明(むみょう)を除く。
  一字に千理を含み、即身(そくしん)に法如(ほうにょ)を証す。
  行々(ぎょうぎょう)として円寂(えんじゃく)に至り、去々(ここ)として原初(げんしょ)に入る。
  三界(さんがい)は客舎(かくしゃ)のごとし。一心はこれ本居(ほんこ)なり。
  我、今至心(ししん)に懺悔し謹みて般若心経を写経し奉る。
  仰ぎ願わくは、一字一文(いちじいちもん)法界に遍じ
  三世十方(さんぜじっぽう)の諸仏に供養し奉らん。

 6.浄写(無我の境地に入り、至心に写経する)


 長谷寺「写経の作法」

 1. 用意
    まず、香(または線香)を焚き、用具をととのえ、心身を清めて着座し、合掌します。

 2. 懺悔
    身、語、意の三業を清浄にするために、懺悔文を唱えます。

 3. 誦経
    心経(観音経)等、写経する経を詠みます。

 4. 願文
   「我、いま至心に懺悔し奉り、一字(筆)三礼の懇念(法)を以って観音経(心経)を浄写し
    奉る。仰ぎ願わくは、一字一字法界に遍じ、三世十方の諸仏に供養したてまつらん。
    乃至法界  平等利益」

 5. 写経

 6. 祈願
   最後に願い事を書き、祈願する。
   <例> 為先祖代々菩提也   家内安全  学業成就  病気平癒  心願成就  など

 7. 浄写した経に目を通しながら唱え、記念します。

 8. この功徳を普く回向いたします。
    普回向



 平成18年2月現在、奈良の長谷寺では観音経のお写経用紙を三巻分を販売しています。
 郵送もしてもらえます。また、書いた写経を右の赤いケース(裏返すと郵送できます)にいれて
 送りますと、奉納できます。

 下の用紙は、京都東寺の写経用紙です。最後のご宝号が独特ですね。字体も、大師直筆そっくりです。
東寺の写経用紙

伝 弘法大師 直筆


[写経の様式]

〔天地のあき〕
 写経用紙には、せまい方を天(上)に広い方を地(下)にします。罫粋があり天地の広さがちがいます。
 これは、経典を尊崇する意味で、古くから行われてきた様式に従っているのです。

〔内題(首題)〕
 一巻を代表する経題ですから、省略せずに正式名称で書きます。
 <例>摩訶般若波羅蜜多心経
  (真言宗系では仏説が加わります)
  長文の場合も一行につめ、しかも文字が小さくならないように書き、下に余白を持つのが、正式の法式です。

〔本文〕
 一行十七字づめが約束。これは、唐代の初めに統一されたと言われていますが、
 十七字にこだわらないものも少なくありません。

〔奥題(尾題)〕
 省略した題名が、よく用いられます。
<例>般若心経

〔空行〕
 内題の前、本文と奥題の間、奥題と願文の間、巻末などに空行をとることは、古来からの様式で、
 美的効果の上でも必要です。

〔誤字、脱字の処置〕
 脱字を見つけたときは、そこに筆先で黒点をつけ、脱字を行末に書きます。二字脱字なら、二点をつけます。
 誤字は、本来、はじめから書き直すべきですが、誤字の右肩に黒点をつけ、その行の上またはそばに、
 正しい字を書けばいいでしょう。


 7.祈念(それぞれの願いごとを書き、念ずる)
   〔願文〕
 祈りをこめて書く写経には、巻尾に願文を書きます。年・月・日、姓名、写経の場所、誰のため、という様式です。
 修養や書道としての写経なら、願文を書かなくて結構です。
      
     「右 為    ( ○ ○ 祈 願 )」
      一行 あけて
     「写経願主  ( 自分の名前 )」
     「   年   月   日 」

 8.般若心経読誦(合掌)
(浄書したお経に目を通しながら唱える)
 
 9.般若菩薩真言 三返

    オン  ヂシリ  シュロタ  ビジャエイ ソワカ

 10.回 向

  願わくば此の功徳(くどく)をもって
  普(あまね)く一切に及ぼし、
  我等(われら)と衆生(しゅじょう)と
  皆ともに仏道(ぶつどう)を成(じょう)ぜん

 11.合掌礼拝

 12.退 座


浄写された写経用紙は、お近くの寺院に御奉納されると良いでしょう。


[写経の歴史]

 写経とは、いうまでもなく経典を書き写すことです。
 
 釈尊の滅後、その教えを後世に伝えるため、高弟を中心に一同に集い、編纂を試みました。
 こうして体系付けられたのが、いわゆるお経です。

 その後大乗仏教の発展とともに、さらに新しいお経が次々と生まれました。

 インドでは、初め多羅椰子(たらやし)という木の葉にサンスクリット語などで記され、それが
 中国に入って漢文に翻訳されました。こうしてお経は仏教徒たちの手によって次々に書写さ
 れて広まり、八万四千もの膨大な経典は、このように写経によって日本にも伝えられました。

 日本への仏教伝来は六世紀半ばですが、673年、天武天皇の時代に奈良の川原寺で写経が
 行われたという記録が「日本書記」に残っています。

 奈良時代になると、写経は国家的な事業となり、図書寮という役所まで作られています。
 国家安泰や五穀豊穣などを祈って、数多くの経典が有力寺院や図書寮の写経司によって
 書写されました。

 その後、美しい装飾で知られる「平家納経」など、寺院以外でも祈願を込める手段として写経は
 行われ、庶民の祈りを表すすべともなり、今日まで連綿と維持・伝承されています。


[写経の意義]

 写経は仏の教えを体得するための仏道修行でもあります。ですからかつては、写経生や僧侶は
 斎戒沐浴して身を清め、部屋を荘厳して写経に臨みました。

 仏の金言であるお経を書き写すのですから、一字一字を仏と思って心を込め、清らかな気持ちで
 取り組んで下さい。心静かに書き写していると、次第に気持ちが落ち着き、一巻書き上げた時には、
 何か目的を成就した様なすがすがしい気分が味わえます。

 書いているうちに、心が落ち着き、ゆったりとした安らぎの時間を得ることができれば、
 これこそ本当の写経の功徳であるといえるでしょう。

[写経の功徳]

 写経の目的は、自らの信仰を深める宗教行為であるだけでなく、父母、先祖、師、縁者の追善で
 あったり、心願成就といった祈りそのものでもあります。

 経典を受持(仏の教えとしてそれを受けるということ)し、読誦(お経を読むこと)し、解説(人のため
 にそれを説いて聞かせること)し、書写(写経すること)することは、坐禅や念仏と同じように、限り
 ない功徳を持つ仏道の修行であります。

 従って、写経の心構えは謹しんで厳粛でなければなりません。誤字や脱字のないように努めるのは
 当然でありますし、姿勢や服装にもよく気を付けなければならないと思います。単に字を写して行くと
 いう作業にとどまるのではなく、体を整え、呼吸を整え、心を整え、そして身心を清浄にして写経する
 ところに本当の功徳があります。

 経典が本来持っている功徳、過去の長い長い時代を超えて、多くの人々に確かめられ受け継がれて
 きた教えの一つ一つが、写して行く字の一つ一つにこめられているということを忘れてはなりません。


仏教の勉強室

読経のすすめ 宗派の説明  戒律について ■阿字観 ■仏の印  
■諸仏の印相  ■仏尊の種字と真言  ■数珠の話 

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