四国八十八箇所巡礼  準備篇 


[巡礼の手引き]

 四国八十八ヶ所札所は、弘法大師が大自然に分け入って御身一人で厳しい修行を重ね、
万人を救う方便究寛の世界を開いた所です。八十八ケ所巡りの起源は、弘法大師の入寂
(835年)後、その弟子たちが大師を慕ってその遍歴の跡を辿ったことによるものと言われています。

[四国八十八ヶ所の起源]

 四国八十八ケ所の霊場は、弘法大師が開かれたものですが、霊跡全部が短期間にできた
わけではありません。大師の若い頃からの修行の集大成が八十八の霊場で、大師42才の頃
の事跡が最も多いところから、弘仁6年(815年)に開かれたと伝えられています。

 大師の開かれた八十八の霊蹟をめぐる四国遍路は、伊予国温泉郡荏原村の長者、衛門三郎
が自分の非を悟り、大師のあとを追って四国を廻ったのがはじまりだと言われています。

 今昔物語や保元物語にも四国遍路のことが伝えられており、平安末期から南北朝にかけての
頃には既に、日本各地から四国を訪れていたことが、霊場寺院に残っている落書からも知ること
が出来ます。

 四国霊場は、阿波の国を
発心の道場と言い23ケ寺、土佐の国は修行の道場で16ケ寺、
伊予の国は
菩提の道場で26ケ寺、讃岐の国は涅槃の道場で23ケ寺。全て合わせて八十八ケ寺、
三百余里(約1300km)の旅です。

 この霊場は、四国の山野に開かれた心と体の修行の道場で、八十八の煩悩を除き、
八十八の功徳をもたらすと言われています。大師は一本の金剛杖によって常に遍路を
見守り、八十八ケ所の結願へと導いていかれます。

 現代の四国八十八ヶ所巡礼の旅は、弘法大師の功徳をしのび、大師の修行の道を辿り
ながら心の修行を重ね、これからの人生をじっくりと考える事の出来る旅と言えます。

[参拝の作法]

山門に入る前に一礼する。
手を洗い、口をすすぐ。
本堂に行き、ローソク・線香をあげる。
納め札、写経を奉納する。
 「仏前での作法」
一、 合掌礼拝(がっしょうらいはい)
     胸の前で合掌し三礼しながら「うやうやしく み仏を礼拝したてまつる」と唱える。一返
二、 開経偈(かいきょうげ)   続いて 懺悔文(さんげもん) 帰依文(きえもん)
三、 般若心経(はんにゃしんぎょう)一巻      
四、 御本尊真言(ごほんぞんしんごん)三返  (お参りしたお寺のご本尊の真言をとなえます。)
五、 光明真言(こうみょうしんごん)三返
六、 御宝号(ごほうごう、南無大師遍照金剛(なむたいしへんじょうこんごう)三返
七、 回向文(えこうもん)一返
八、 「ありがとうございます」と述べ、合掌一礼

つぎに大師堂に行き、同じ事を繰り返す。

一通りお詣りが済んだら、納経所で納経帳に記入いただき、朱印を押してもらう。
最後に山門を出る際に、一礼をして次の寺に向かう。


[巡礼用品]

普段着でも構いませんが、最低限揃えたいのは金剛杖、納札、納経帳。そのほかは必要に応じてお揃えください。

金剛杖(こんごうづえ)
  
お大師さまは「同行二人」と刻まれた金剛杖を通して、巡礼を見守って
  くださいます。弘法大師と同行二人で聖地を踏み、大師の御加護で無
  事に巡拝出来ると伝えられています。なお、宿を断られた大師が橋の
  下で眠ったという言い伝えがあり、橋の下の大師を起こさないよう橋の
  上では杖を突かないようにします。

  杖は遍路を導く弘法大師の化身と言われる大切な道具。取り扱いにも
  心を込めて、自分より先に杖を休めるようにしなくてはならない。
  宿では、まず杖の先を洗い、丁寧に拭き、合掌する。

菅笠(すげがさ)お遍路さんの正装で、日除けのためにかぶります。
  雨に打たれ、太陽に焼かれて歩く遍路の必需品笠には、同行二人と
  書き、迷故三界城(迷うがゆえに三界はしろなり)、悟故十方空(悟る
  がゆえに十方は空なり)、本来無東西(ほんらい、東西無く)何処有南
  北(いずくんぞ南北あらん)と書きます。笠をかぶったまま、礼拝し、お
  堂の中でも笠を取らなくてもよい。  

輪袈裟(わげさ)
  略式の袈裟です。お坊様の袈裟を簡略化したもので礼拝の際の正装具。

輪げさ止め
  輪げさがずれない様に首の後ろで白衣に止めるものです。

白衣(びゃくえ)
  白装束には身を清める意味があります。僧侶の黒衣に対して俗人が着る服です。
  巡礼の際の正装とされる服装です。旅ですから、白っぽいシャツで許してください。

  遍路は上下白づくめの体になるのが基本です。白装束は遍路としての自覚にもなり、
  身を引き締めてくれます。白衣は道中着と判衣の2着が必要。判衣は八十八札所のご宝印をいただく
  白衣で洗ってはいけないので、丁寧に扱う。ご宝印が高野山奥の院ですべて揃った判衣は家宝とし
  て遺族に伝えられるが、冥土へ旅立つ晴れ着ともされる。   

札狭(ふださし=納札入れ)
  札所に納める納札の入れ物です。

持鈴(もちすず)
  鈴の音は煩悩を払いのけて、清浄な心の活動を助けると言われています。お遍路さんの特徴は、
  鈴の音に象徴されます。仏様を美しい音色でもてなす為の鈴です。

ズタ袋(ずたぶくろ)山谷袋ともいいます。
  賽銭、経本、ロウソク、線香など、旅に必要な小物を入れる袋です。

数珠(じゅず)
  仏様を拝む時に手にかけます。お参り用は普通尺二寸の物を使用します。
  念珠は、右手の中指と、左手の人差し指に掛けます。

その他
  手甲、脚半、地下足袋など、昔ながらの旅装束です。

札ばさみ  
  納め札を収納するバッグです。

納め札  
  本堂と大師堂に奉納する札です。このお札に住所、氏名、年齢を記入し本堂、大師堂に納めて、
  ご本尊さま、お大師さまに参詣のご報告をします。
  ひとりの修行者として、お札を霊場に残します。お札は、修行者が行の証に、行場に師や施しを頂
  いた方に差しあげるものです。
1  本堂に一枚、お大師堂に一枚納めます。(納め札入れが各寺の、本堂と大師堂にあります。)
2 お接待を受けた時も、一枚差し上げます。
  自分の積んだ功徳が僅かでもあれば、お接待を下さった方の為に、惜しみなく差し上げる心で
  差し上げます。
    白い納め札は1回〜4回 
    青い納め札は5回以上7回
    赤色納め札は8回以上24回
    銀色納め札は25回以上49回
    金色納め札は50回以上
    錦札は100回以上お遍路された方が使います。 

ご納経
  各札所でお経を唱えた(写経を奉納した)しるしにいただくもの。一生のお守りであり、
  悩みのある時は、これを礼拝します。また、ご軸(納経軸)は家宝として、帳面、白衣は、
  重ね印といって、二回、三回とお参りするたびに最初の同じ帳面、白衣に印を重ねていきます。


※ 巡礼中トイレに行く時は必ず杖.笠.さんや袋.数珠.わげさ等は、外して持ち込まないで。
    

  巡礼の際に使用するこれらの用品は各札所周辺の売店でも購入できます。
  仏具屋さんでも、真言宗系なら常時品揃えしています。
  ホテルでも巡拝用品のセットをそろえてくれるそうです。

[巡礼用語集]

遍路   信じるものを心のよりどころに、霊場をめぐる旅をする人を指す。
      また、その行程のことを指す場合もある。

同行二人 「どうぎょうににん」と読む。巡礼の旅にはいろいろ困難をともなうが、いつも弘法大師が一緒に
       あるいてくれると信じて巡礼すること。大師の身代わりとして杖を持つにはそういう理由がある。

札所   八十八ヵ所の霊場のこと。

打つ   霊場にお詣りすること。昔は板に書いた納め札を、打ちつけていったことから、この言葉が
      残っている。「何番を打ちました」といえば何番かにお詣りしたこと。

順打ち 一番、二番、三番というふうに札所順に巡拝すること。

逆打ち 札所を逆番に巡拝すること。例えば四十三番から四十二、四十一、四十と進むこと。
     弘法大師は今も生きており、順打ちで回り続けているため、逆打ちすることで大師に
     会うことができるいう言い伝えがある。

一国まいり 四国のうちの一国を詣ること。たとえば阿波(徳島県)なら二十三ヶ所を巡拝する
       ことをいう。毎春一国、または春秋に二国を巡り、四年がかりまたは二年がかりで
       全霊場を巡拝する人もいる。

同行さん 遍路同士が相手を呼ぶときに言う。

おせったい 遍路に物品、金銭などを与えもてなすこと。遍路はそのお礼に納め札を渡す。



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