真言について

           静慈園 『梵字悉曇』朱鷺書房を参考にしました。


 密教では、「呪術的な教え」であった古来のインドの密教に、善無畏・金剛智によって思想的にも修法の
 面でも、新しい思想によって展開し、不空・一行などの努力もあって、「大日経」・「金剛頂経」系経典として
 世に流布することとなった。

 密教には、教理としての思想面と、修行としての実践面がある。
 実践面は、密教独特の修行独特の修行方法による。

 「三密行」である。身密・口密・意密。身体と言葉と意(こころ)。

 身体に限りなく浄化された極地は、印として象徴される。手に印を結び、印に仏そのものを象徴し、自分が
 仏であると感じていくのである。

 その発する言葉は、限りなく浄化され「真言」としてとらえていく。

 意(こころ)を限りなく高めていった心を仏とし、同化されていくのである。

 手に印を結び、口に真言を唱え、心に仏を観ずる実践行である。仏即自分であることに気づく行。

 
 ○真言とは、古代インドでは、マントラの訳語で、元来ヴェーダの祈祷句を指す。
         諸神の徳を唱える讃歌を指す。密教では、如来等の諸尊の真実にして虚妄ならざる言語、
         つまり聖なる真実の言葉の意味。

 ○陀羅尼とは、ダーラーニーの音写であり、保つという意味。記憶等を保持する力を意味している。

 ○明とは、知るという意味で、愚闇を除いて真理に通達する智慧のこと。

 ともに、仏の力を内に生み出す聖句という意味であり、同義語であるといえる。
 また、真言は、唱える中にあってこそ力となるものであり、意味の理解を目的としたものではない。
 基本的に古来の漢訳者も、音写として訳し、意訳しないのが通例である。

 従って、漢訳当初から翻訳のやりかたで、訳語における漢字の違いは、問題ではない。

 <参考>

  オン・・・真言のはじめにつける慣用句。「帰命する」という意味。
       密教では、一切法門の根元、大日如来の真身をいう。

  ソワカ・・・聖句の末尾に置いて、「成就あれ」の意味。

  バッタ(ハッタ)・・・主として調伏法の末尾に置く。破壊の意味を表す音。

  ノウマク・・・オンと同じで、「帰命する」の意味。ノウボウ、ノーモ−も同じ。

  ノウマク・サンマンダ・ボダナン・・「あまねく諸佛に帰命したてまつる」


  ※諸佛のご真言を見ますと、「おん・・・」と唱えるのは、直接その仏への呼びかけ。
   「のうまく・・・」と唱えるのは、「いろいろな仏に帰命します。特に・・・」と申し上げる感じ。

   金剛界五佛は、「おん」、胎蔵界五佛は、「のうまく」ですね。