愛染様のご真言 考察


  おん まからぎゃ ばぞろ しゅにしゃ ばざら さとば じゃく うん ばん こく

  (帰命したてまつる 大愛染尊よ 金剛仏頂尊よ 金剛薩たよ 衆生を四種に摂取したまえ)

      「真言陀羅尼」(坂内龍雄氏 平河出版)から。

 実は、愛染さまを勉強し始めて、あちこちのサイトや寺院に訪問したりしている分けですが、
 ずっと悶々としていることがありました。それは、ご真言です。
  私の愛染堂だよりをご覧いただければいいのですが、調べるその度にご真言が異なるのです。

 「一例です。」
  ・おん まからぎゃ ばさろ うしゅにしゃ ばさら さとば じゃく うん ばん こく
  ・おん まきゃらぎゃ ばさら うしゅにしゃ ばさろ さたば じゃく うん ばん こく

 ●もともとは、経典にある真言や明をどう読むかで、長い時代を口承で伝えてきたわけですから
  徐々に変化して当然なのでしょうが、私たち学ぶものとしては、気持ちとして、一番信憑性のある
  ものを知りたいのは、当然かと思います。

 ●高野山福知院のご住職から以前にメールをいただいたことがあります。

  『今から<愛染明王>の唱え方をお教えいたします。

  (オ−ン マ-カ-ラ-ギャ バ-ゾロシユウニ シャ- バ-ザラサトバ ジャ-クウン バン コク

  これは 愛染様の真言です。これを覚えて 数珠だまで 数を数えながら、7返 21返 108返
  という具合に、じょじょに増やしていってください。』

 ●そこで、「真言陀羅尼」(坂内龍雄氏 平河出版)に掲載されている真言や陀羅尼から

  「ばさら」、「ばさろ」を探してみました。どうやら活用のようなものがあるようです。



   vajro         バザロ      [金剛を]、 いわゆる目的格。「金剛を発生する・・」
   vajra(aの上に^)  バザラ      [金剛の]、 比喩表現?   「金剛のような・・」
   vajra         バザラ       [金剛よ]、 連体修飾格や、体言 「金剛よ」、「金剛の・・」
   vajri         バザリ       ?、

  隆蓮房さんに教えてもらいました。
   『サンスクリットでは、フランス語のリエゾンのような法則があり、
    例えば、単語の末尾にAがきて、次の単語の頭にUがくると、
    A(あ)+U(う)=O(お)になるので、愛染明王の真言は、
    「バザラ ウシュニシャ」を「「バゾロシュニシャ」というふうに発音します。』
   そうなんだ!


 ☆四摂真言(四字真言)『金剛寿命陀羅尼(経)法』

   jah hum van hoh (uは上に-がつきます)  ジャク ウン バン コク

  「(生死流転の山海にいる衆生を)
  
   鉤(つりばり)にかけ、索(あみ)で引き寄せ、鎖(くさり)で煩悩を縛り、鈴(歓迎の楽)で喜ばせる 」
   [鉤金剛 ジャク]   [索金剛 ウン]      [鎖金剛 バン]      [鈴金剛 コク]

  また、五字真言では『大般涅槃経』巻一寿命品第一

   Hum ta ki hum jah hum siddhi (文字は、正確ではありません)
  ・うん た き うん じゃく (うん しっじ)
  
   「ふーん タキー神よ ふーん 滅除せよ ふーん 成就せよ」


 ●そこで、次に愛染明王の基本経典のひとつである
   『金剛峯楼閣一切瑜伽瑜祇経(こんごうぶろうかくいっさいゆがゆぎきょう)』をみることにします。
   この経は、金剛界曼荼羅の基本構造が説明されている経典として有名ですが、ここでの観点は、
   ご真言です。巻は上・下で全編十一段です。(詳細は別途掲載)

   「巻上 序品 第一」
    
      薄伽梵は、五智所成四種法身し、金剛界遍照如来(大日如来)となり、三十七菩薩尊の力を
      身につけて、普賢菩薩ー金剛薩たー普賢如来となっていきます。

     ※私のイメージですが、金剛界曼荼羅に対峙した釈迦は、その中心の成身会の37諸仏のご真言を
      ひとつづつ唱えます。するとそれぞれの仏は、その持つ能力を光の玉として中心である大日如来に
      送ります。そうして、すべての力を身につけた大日如来は、光輝き、向き合う行者と同体化していき
      ます。それから、いろいろな願いをかなえていくのですね。

      序品では、37尊それぞれの一字真言を唱えます。

         虚空蔵菩薩 jaH 惹   じゃく
         金光菩薩  hUm 吽  うん
         虚空旗菩薩 vam 鑁  ばん    金剛界如来(大日)VaM 鑁
         虚空笑菩薩 hoH 鵠  こく     内修供養天女使 hAH 鵠

    「一切如来金剛最勝王義利堅固染愛心品 第二」

      世尊は「馬陰蔵三摩地」に入る。獅子の吼える声、雷が震動。天鼓が鳴り、香象王の声。
      そのとき、世尊が明に曰く、
       oM ma hA raga vajro SHI Sa va jra satva jaH+jaH hUM vaM hoH
       おん ま きゃ らぎゃ ばざろ しゅに しゃ ば ざら さとば じゃく うん ばん こく
      
      世尊は、大金剛位ないし普賢菩薩位を得る。
      この真言及び密印を心・額・喉・頂の四箇所にあてます。

    「摂一切如来大阿闍梨位品 第三」

      大金剛阿闍梨位法性である大日如来の身になります。

    「金剛薩た冒地心品 第四」

      禅智捻進力を得ます。

    「愛染王品 第五」

      一切如来共成就雑法、画像法(いわゆる愛染曼荼羅のもとですね。)
      息災・増益・敬愛・降伏の祈祷です。

      hU+hUM ta ki huM jaH+jaH
      うん た き うん じゃく
      
    「一切仏頂最上遍照王勝義難摧摧邪一切処瑜伽四行摂法品 第六」

      四行摂法
      oM va jra sa tva jaH+jaH huM vaM hoH
      おん ば ざら さ とば じゃく うん ばん こく

    「一切如来大勝金剛心瑜伽成就品 第七」

      一金剛輪
      hUM si ddhi
      うん し っじ

    「一切如来大勝金剛頂最勝真実大三昧耶品 第八」

    「一切如来内護摩金剛儀軌品 第十」
   
    「金剛薩た菩提心内作業潅頂悉地品 第十一」

 ●『金剛王菩薩秘密儀軌 一巻』 
     四摂女の真言で、「弱 吽 鑁 魁」の種字があります。

     金剛鉤 弱 じゃく  色金剛
     金剛索 吽 うん   声金剛
     金剛鎖 鑁 ばん   香金剛
     金剛鈴 魁 こく   味金剛

 ●『大楽金剛薩た修行成就儀軌 一巻』
    敬愛法先於自身前觀阿字門。
    成淨月輪。於月輪中觀斛字。成金剛愛菩薩。
    身珠砂色身放紅光。二手持箭。
    分明觀已則誦四字明。結印引入自身。四字明曰
      「弱 吽 鑁 斛
    便以印加持四處。心額喉頂眞言曰・・


 [ 結論 ]

  今回は、愛染明王関連の経典から、その真言について調べたことをあげてみました。
  どうやら、ご真言の文字は、

  おん まから ぎゃ ばざろ しゅにしゃ ばざら さとば じゃく うん ばん こく

  そして、五字真明で

  うん た き うん じゃく

  一字心真言

  うん し っじ
  
 
   今後は、これで唱えます。


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