富楼那尊者(プンナ)
説法第一の富楼那(ふるな)


告白してしまいますと、釈迦十大弟子という言葉に出会った最初は、私が仏門に入るずっと以前、学生時代に見た棟方志功展でした。その展覧会に志功の大作「釈迦十大弟子」が出品されていたのです。以来、私はすっかり志功ファンとなりました。


志功は「わだばゴッホになる」と言って、大正13年、21歳の時、青森から上京しました。後に版画とめぐり会い、昭和14年「釈迦十大弟子」を完成させました。志功が釈迦十大弟子を彫ろうと決心したのは興福寺の須菩提像に出会ったからだと述懐しています。さらに、「後で辞典を見ましたら、彫った顔だちと姿勢が恐ろしくなるほどビッタリばかりなのでした。智慧第一と呼ばれる舎利弗は、利口に頭が抜けていて、弁護士の大将みたいな富楼那は口を開いて舌までのばして説法しているのです」(棟方志功『板極道』)。


そうした目で志功が彫りあげた説法第一の富楼那尊者を見ますと、他の作品より動きがあり、腕を振り上げ、熱弁をふるっているかのようです。卓越した芸術家の感性は凡僧の比ではないことを思い知らされた感じです。後にこの「釈迦十大弟子」がビエンナーレ版画部門の金賞を受賞して、世界の棟方になりました。


舎利弗  ■目連   ■摩訶迦葉  ■阿那律  ■須菩提 
富楼那  ■迦旃延  ■優波離    ■羅喉羅  ■阿難

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