お経をあげましょう
 (宗派によって、読む順番が少し変動したり、漢文でなく書き下し文であったりします。)


  各宗派のお経のお作法  http://jin.zen.or.jp/~sato/bunko/gongyou/


天台宗
   勤行式のことを「勤行儀」”ごんぎょうぎ”と言い、在家信者に次のようなことを要請しています。

@懺悔文
A開経偈 かいきょうげ
B般若心経
C回向文

まずは灯明をつけ、姿勢を正して仏前に正座。
合掌・礼拝してから経本を軽くいただいて開き、鈴を二つ鳴らしてから勤行を始める。
三礼、懺悔文、開経偈と進めて行く。
区切りごとに鈴を一つずつ鳴らし、最後に三つ鳴らして終わる。

仏前でお参りする時に欠かせない数珠は、左手の親指と人差指の間にかけて合掌する。
焼香は、線香を適当な長さに折って火口を倒して横たえ、香を親指と人差指、中指でつまみ、二回くべる。

天台宗の教えの根本経典は「法華経」である。
しかし、日本天台宗を開宗した伝教大師は、「法華経」の教えには三種あるとして、
そのうちの一つ、根本法華経を後世、般若心経と指定した。
勤行の中心となるお経は、朝は、「観音経」や「般若心経」夕方は「自我偈」や「円頓章」になる。
勤行を全部行う余裕の無い場合は、般若心経のみ、または「観音経偈文」と般若心経を唱えること。

(天台宗総本山比叡山延暦寺)


真言宗の各派のうち、高野山真言宗を例にします。

@合掌礼拝
A懺悔文
B三帰
C三竟
D十善戒
E発菩提心 ほつぼだいしん
F三摩耶戒 さんまやかい
G開経偈
H般若心経
I本尊真言
J十三仏真言
K光明真言
L御宝号
M祈願文
N回向

真言宗の信仰生活は、供養と礼拝と言えます。
仏壇はご本尊とご先祖を祀るだけではなく、家庭教育の要でもありますから、
仏壇の荘厳に常に気を配らなければなりません。
勤行は、合掌と礼拝。特に真言宗は祈りの宗教ですから、
三密行(身・口・意)がそのまま生かされる礼拝を行うことが大切です。

数珠を扱う時には細かい作法がありますが、持つ時は両房を内側に、
その時、記子(房の部分の珠)の珠が一つ多いほうを上にする。
たたみ置く時も両房を内側にする。

焼香は、香炉に抹香を引き、その上に五種香を置く。
線香の場合は三本立てる。
般若心経は、真言宗にとって大切なお経ですから在家信者の勤行の中心となります。
勤行を全て行う余裕の無い場合は、開経偈、般若心経、光明真言、大師宝号、回向を行います。

(高野山真言宗総本山金剛峯寺)


臨済宗
天龍寺、建仁寺、南禅寺、大徳寺、相国寺、建長寺等多くの派に分かれていますが、妙心寺派の場合を例にします。

@開経偈
A般若心経
B本尊回向
C坐禅和讃
D舎利礼文
E宗門安心章

一日に一度、静座して、心をこめて勤行を行う。
まず、合掌・礼拝し、開経偈、般若心経を唱えた後に、本尊回向、坐禅和讃、舎利礼文、宗門安心章、合掌・礼拝で終わりますが、般若心経以降の順番はどうでもかまいません。
焼香をする場合は、うやうやしく香をいただいてから焼香し、合掌する。線香であれば、まっすぐに立てて、静かに合掌する。
禅宗の一つである臨済宗には、特にこれを絶対に読まなければならないという経典はありません。しかし、般若心経は最もよく読まれている経典です。
在家信者の勤行の中心となるお経は、般若心経をはじめ、「大悲咒」「開甘露門」「観音経」などがあります。
勤行をすべて行う余裕の無い場合は、般若心経を唱えるだけでも十分です。

(臨済宗妙心寺派大本山妙心寺)


曹洞宗
禅宗の一つである曹洞宗は、「只管打坐」(しかんたざ)を教えの特徴としています。この言葉は、曹洞宗の開祖道元禅師の著書「正法眼蔵」(しょうぼうげんぞう)の中でしばしば使っています。曹洞宗の坐禅とは、ひたすら坐禅をすることによって自らの仏性を見出そうとするものです。
ですから、勤行を始める前にまずは仏壇の前に正座して、両手を下腹のところに組み、それから深呼吸(腹式呼吸)を二、三度して心を落ち着かせる、ということが大切です。勤行は朝と夕方に行う。
焼香する場合は、最初に香を軽く頭に押しいただいてから香炉に焚く。(続いて今度は、押しいただかずに焚く。)
曹洞宗にとって般若心経はきわめて重要な位置を占めている。在家信者の勤行の中心となるお経は、般若心経をはじめ、「観音経」「修証義」などです。
勤行を全部行う余裕の無い場合は、仏壇の前に座って、合掌・礼拝をするだけでもよい。

(曹洞宗大本山總持寺)


浄土宗
念仏によって日々の生活を送るのが一番とされていますが、多忙な中でも、せめて朝起きたら仏壇に向かって手を合わせ、回顧、回向するべきである。
経典としては「無量寿経」中の「四誓偈」が中心となります。
焼香は、一回、二回、三回とそれぞれ意味を持っていますが、心をこめて一回行うのがよい。
般若心経は、祈願の時と食作法(食事の時の作法)の時に唱えます。勤行を全部行う余裕の無い場合は、声に出して十辺の念仏「十念」を唱えます。


浄土真宗本願寺派
勤行は出来るだけ毎日行う。在家信者の勤行の中心となるお経は「浄土三部経」といわれる「仏説無量寿経」「仏説観無量寿経」「仏説阿弥陀経」です。焼香は、仏前に正座して軽く頭を下げ、抹香をつまんで香炉に入れる。香は頭に押しいただかない。回数は一回でよく、その後合掌・礼拝をする。
浄土真宗は、阿弥陀如来の本願のおかげで救われていくことを勤めるので、般若心経はそぐわない。
勤行を全部行う余裕の無い場合は、仏前に座り、合掌・礼拝をすればよい。


真宗大谷派
できれば毎日、朝と夕方に「正信偈」の勤行を行う。在家信者の勤行の中心となるお経は、「浄土三部経」といわれる「仏説無量寿経」「仏説観無量寿経」「仏説阿弥陀経」です。焼香は、香を頭に押しいただかない。回数の決まりは特にありませんが、厳密にいえば二回つまむ。
親鸞聖人が「浄土三部経」を帰依の聖典としたため、般若心経を唱えることはありません。
勤行を全部行う余裕の無い場合は、仏前に座り、合掌・礼拝をする。


日蓮宗
勤行は毎日続けて行うことを心がける。経文は仏のことばであり魂であるから、誤った読み方をしないよう、朝の勤行にはできれば経本を用意する。
読誦する基本的な経文は、勧請、開経偈、妙法蓮華経方便品第二、同如来寿量品第十六、ご妙判、お題目、宝塔偈、回向、誓願の順
焼香の回数は三回ないし一回、線香は一本ないし三本となっています。
日蓮宗では、「妙法蓮華経」を所依の経典としているため、般若心経など他のお経を唱えることはありません。


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