『般若心経秘鍵』講義ノート
H25..4.から、高野山大学 「祖典講読(般若心経秘鍵)」松長恵史先生
教科書・・・「十巻章」 高野山大学出版
「般若心経秘鍵」(定本弘法大師全集第3巻)
参考書・・・「空海 般若心経の秘密を読み解く」 松長有慶 春秋社
「般若心経秘鍵」 金岡秀友 太陽出版
「空海コレクション2」 宮坂宥勝 ちくま学芸文庫
H25.4.12
般若波羅蜜多心経の「心」は、心(フリダヤ)・・つまり、真実語を集めた陀羅尼のことである。
・フリダヤー心臓、真髄、心真言
「秘鍵」の特色
この書は、「般若心経」に対する、空海の独自の見解を示した書といえる。
@「般若心経」は、大乗仏教の教理を文字で書き表したものではなく、大般若菩薩の
悟りの内容を、真言の形で説き示した経典である。
A「般若心経」は、大乗仏教の空の思想を説くだけでなく、仏教のあらゆる教えを
含んだ経典である。
「五蔵の般若は、一句にのんで飽かず 七宗の行果は、一行にのんで足らず」
・五蔵ー経・律論・三蔵・般若蔵・陀羅尼蔵
・七宗ー律・倶舎・成実・法相・三論・華厳・天台
B「般若心経」を般若菩薩の悟りを凝縮した心真言を主体として説く
H25.4.19
「秘鍵」の意味
★ 「秘密」とは・・・如来の秘密と衆生の自秘
空海は顕教(一般仏教)と密教とにどのような相違があるのかを示した『弁顕密二教論』において、
「秘密」の意味するところを以下のように定義している。
『謂わゆる秘密に且(しば)らく二義有り。一には衆生秘密。二には如来秘密なり。
衆生は無明妄想(もうぞう)を以て本性の真覚を覆蔵するが故に衆生自秘と曰う。
応化の説法は機に逗(か)なって薬を施す。言は虚しからざるが故に、このゆえに他受用身は
内証を秘して其の境を説き玉わずなり。則ち等覚も希夷(きい)し、十地も絶離せり。
是れを如来秘密と名ずく。』
「如来の秘密」としての「秘」なら、「鑰(錠)」(含まれている教え)と解釈できる。
(平安期 済せん 『・・開門訣』 「鍵者鑰義也」)
「衆生の自秘」としての「秘」なら、「鍵」(気づくこと)と解釈できる。
(平安期 覚鑁『・・略注』 「鍵者開蔵示宝之義」)
「般若心経」の話
今、私たちが目にしている「般若心経」は、
原型が、羅什訳『摩訶般若波羅蜜多経』である。これは、明らかにいくつかの経典の
部分を集めて作ったものであると認められる。
『大品般若経』「習応品」第三の頭に、「観自在菩薩・・」を添加し、終わりに「無生品」や
「観持在」などの句を取り、最後に『陀羅尼集経』の呪を付加したものである。
漢訳の「般若心経」は、8種類あり、空海が目にすることができたのは、
羅什訳(402-412)『摩訶般若波羅蜜大明呪経』以下
玄奘、義浄、など5種の訳経であった。般若訳(810)『般若波羅蜜多心経』まで。