ふたりしずか

これも、部下の結婚式の祝辞です。

ご結婚おめでとうございます。
また、ご両家のお父様お母様皆さま、本日はまことにおめでとうございます。

職場の代表というより、同じような年頃の娘を持つ父として、今後末永くお二人が幸せでありますようにと願うばかりでございます。
夢にまで見た、バージンロード。おとうさんのお気持ちが、感じられましたか。私は、長く携帯の待ち受けにしていましたよ。今では、孫一本ですがね。

今日のよき日に、お二人に、万葉集の有名な歌を贈りましょう。

 フタリシズカという花は、4,5月ごろ、ひっそりと山蔭に咲く。白い花穂が二本、寄り添うように咲きます。この花の古代の名は「つぎね」といいます。

  つぎねふ 山背道(やましろじ)を 
人夫(ひとつま)の 馬より行くに
  己夫(おのつま)し 徒歩(かち)より行けば 
  見るごとに 音(ね)のみし泣かゆ 
そこ思ふに 心(こころ)し痛(いた)し
  たらちねの 母が形見と 
我が持てる まぞみ鏡(かがみ)に
  蜻蛉領巾(あきつひれ) 負ひ並(な)め持ちて
  馬買へ我が背(せ)  (巻13 3314)

 フタリシズカの花咲く山城への道を、男たちは馬に乗って行くのに、自分の夫は、馬がないので歩いて通っている。そんな夫の様子を見ていると辛くてならない。「私の母の形見の鏡ととんぼの羽のように薄い高価な布を持っていき、馬を買ってください」と妻は訴えます。

その妻の歌に、夫はこう答えます。

  馬買はば 妹(いも)徒歩(かち)ならむ よしゑやし 
石は踏むとも  我はふたり行かむ  (巻13 3317)

  馬を買っても、妻よおまえは歩いていくだろう たとえ石を踏んでもかまわない。わたしは、お前と二人でともに歩いていこうと思う。

ほのぼのとした夫婦の愛が感じられます。こんなお二人になってくださいね。

どうぞいつまでも、お幸せに。



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