お参りに出るには 
 (四国88箇所参りのとき)


●四国のお遍路に出ようと思います。でも、いったいどうしたらいいのか。難しいですよね。

[四国八十八ヶ所の起源]

 四国八十八ケ所の霊場は、弘法大師が開かれたものですが、霊跡全部が短期間にできた
わけではありません。大師の若い頃からの修行の集大成が八十八の霊場で、大師42才の頃
の事跡が最も多いところから、弘仁6年(815年)に開かれたと伝えられています。

 大師の開かれた八十八の霊蹟をめぐる四国遍路は、伊予国温泉郡荏原村の長者、衛門三郎
が自分の非を悟り、大師のあとを追って四国を廻ったのがはじまりだと言われています。

 今昔物語や保元物語にも四国遍路のことが伝えられており、平安末期から南北朝にかけての
頃には既に、日本各地から四国を訪れていたことが、霊場寺院に残っている落書からも知ること
が出来ます。

 四国霊場は、阿波の国を
発心の道場と言い23ケ寺、土佐の国は修行の道場で16ケ寺、
伊予の国は
菩提の道場で26ケ寺、讃岐の国は涅槃の道場で23ケ寺。全て合わせて八十八ケ寺、
三百余里(約1300km)の旅です。

第一番の札所は、 霊山寺(りょうぜんじ)    鳴門市大麻町板東塚鼻126  にあります。
JR徳島駅からバスやJRで「坂東」駅。高速道路なら「板野」インターです。
高速バスで「鳴門西」から歩いても1km程度。


http://www.shikoku88.net/ から、地図画像をお借りしています。

 現代の四国八十八ヶ所巡礼の旅は、弘法大師の功徳をしのび、大師の修行の道を辿り
ながら心の修行を重ね、これからの人生をじっくりと考える事の出来る旅と言えます。

 車道で、1,400km。歩きでも、1,200km以上あります。
 お参りには、最低30分はかかりますから、計算しながら無理のない計画を立てましょう。


●四国霊場八十八カ所の巡礼を始めるとき、
 きちんとした団体巡礼などでは、まず最初のお寺で授戒の式を受けます。

 これは、必ずしも第一番から始める必要はないので、初めにスタートするお寺でよいでしょう。
 個人でもお願いして、授戒の式は住職に導かれて、通常真言宗の作法に沿います。

 1番霊山寺では、本堂で授戒用の場所があります。

○個人で思い立ったのでしたら、特に授戒を受けなくても、気持ちです。

  三信条
      ●摂取不捨の御誓願を信じ、同行二人の信仰に励む。
      ●何事も修行と心得て愚痴、妄語を慎む。
      ●現世利益の霊験を信じ、八十八使の煩悩を消滅させる。

  「十善戒」を唱えて、仏の前で誓います。
  そして、発菩提心真言(ほつぼだいしんしんごん)
         おん ぼうち しった ぼだはだやみ 
           (仏様、私は清らかな仏心の蓮華を我が胸中に開うと思います。)
      三昧耶戒真言(さんまやかいしんごん)
       おん さんまや さとばん 

          (お前よ、仏性もとより平等なれば、仏である私と
                      一体になり 即身成仏しよう)


  
以上の気持ちを大切にして、これからのお参りの誓いにしましょう。
   回っているうちに、だんだん感じてきて、分かってきます。信じましょう。



   四国八十八箇所巡礼  準備篇 

●個人で、1番さん(霊山寺)からと思っておられる方に向けてのご案内です。

 山門の左右にお店がありますが、向かって右の駐車場奥にあるお店で、「巡礼用品」をそろえましょう。
  ネットなどでもありますし、ツアーなどでは希望で揃えられます。
  ※普段着でも構いませんが、最低限揃えたいのは金剛杖、納札、納経帳

  ☆杖は、慣れないうちは忘れたり、衝きながら歩くのがつらいと言う人もいます。
   でも、できれば絶対持っていただきたいですね。
    地元の人も、どんな格好をしていても、お杖を持っていたら、お遍路さんだと分かってもらえます。
    各札所には、たくさんの忘れ物の杖がありますが、その人の苦が付いていると言います。絶対他人の
    杖を使わないでください。(貸し借りもよくないですよ。)

   お杖、輪袈裟、念珠、など一応そろえたら、20、000円くらいしますね。ご予算に合わせて!
   買い忘れがないように、お店の人と相談してください。笠の紐の結び方も、こつがあります。

  そのほかは必要に応じてお揃えください。2番のお店は安いですね。
  杖、納経帖、線香・ろうそく以外は、2番のお店もおすすめです。


金剛杖(こんごうづえ)
  
お大師さまは「同行二人」と刻まれた金剛杖を通して、巡礼を見守って
  くださいます。弘法大師と同行二人で聖地を踏み、大師の御加護で無
  事に巡拝出来ると伝えられています。なお、宿を断られた大師が橋の
  下で眠ったという言い伝えがあり、橋の下の大師を起こさないよう橋の
  上では杖を突かないようにします。

  杖は遍路を導く弘法大師の化身と言われる大切な道具。取り扱いにも
  心を込めて、自分より先に杖を休めるようにしなくてはならない。
  宿では、まず杖の先を洗い、丁寧に拭き、合掌する。

菅笠(すげがさ)
  遍路さんの正装で、日除けのためにかぶります。
  雨に打たれ、太陽に焼かれて歩く遍路の必需品笠には、同行二人と
  書き、迷故三界城(迷うがゆえに三界はしろなり)、悟故十方空(悟る
  がゆえに十方は空なり)、本来無東西(ほんらい、東西無く)何処有南
  北(いずくんぞ南北あらん)と書きます。笠をかぶったまま、礼拝し、お
  堂の中でも笠を取らなくてもよい。
  梵字「ゆ」が前。「同行二人」が後ろです。
  ビニールカバーが付いた物を選びます。でもつけっぱなしは重いですよ。
  笠にも大きさがあります。  

輪袈裟(わげさ)
  略式の袈裟です。お坊様の袈裟を簡略化したもので礼拝の際の正装具。
  ご自分の檀家のお寺のでもいいです。歩くときは、はずしても。汗でよごれます。
  (一度クリーニングに出したら、着物と同じ値段でしたよ。)

輪げさ止め
  輪げさがずれない様に首の後ろで白衣に止めるものです。
  背中で留めるのですが、後ろの輪袈裟のご紋を挟むと「紋を割る」といって、だめ!

  必要かどうかも考えて。また、輪袈裟用のビニールケースもあります。

白衣(びゃくえ)
  白装束には身を清める意味があります。僧侶の黒衣に対して俗人が着る服です。
  巡礼の際の正装とされる服装です。できるだけ白っぽいシャツを着てください。

  遍路は上下白づくめの体になるのが基本です。白装束は遍路としての自覚にもなり、
  身を引き締めてくれます。白衣は道中着。背中に1番さんと88番結願所の印。
  20番と39番で鶴と亀の印。16番では、襟に光明真言の版をいただくのもいいですよ。

  判衣は、ご朱印をいただくもので、着て歩かないものです。
  判衣は八十八札所のご宝印をいただく白衣で洗ってはいけないので、丁寧に扱う。
  ご宝印が最初の札所のお礼参りと高野山奥の院ですべて揃います。
  棺の遺体に着せます。16番観音寺の光明真言の版があると、死後硬直しないといいます。
  
  おいずる(袖のないもの)・・・どちらでもいいですよ。最近は、トレーナーTシャツもあります。
  背中に「南無大師遍照金剛」(ご宝号)が書いてあります。   

札狭(ふださし=納札入れ)
  札所に納める納札の入れ物です。いろいろ入れられる巡礼バックもあります。

持鈴(もちすず)
  鈴の音は煩悩を払いのけて、清浄な心の活動を助けると言われています。お遍路さんの特徴は、
  鈴の音に象徴されます。仏様を美しい音色でもてなす為の鈴です。結構もつ方が多いですね。

ズタ袋(ずたぶくろ)山谷袋ともいいます。
  賽銭、経本、ロウソク、線香など、旅に必要な小物を入れる袋です。
  ※車の方も、結構歩きますから、肩からかけて歩けるように、見つけてください。

  1つの札所で、本堂と大師堂の二箇所おまいりです。

     賽銭も10円玉でも2枚ずつなら、2*88=176枚
      ※みなさん、いくらくらい入れておられるのでしょうね。
        わたしは、10円です。1円玉の人も見ました。紙に包んで準備している方も。
     ご朱印代は、1寺で300円。 300*88=26、400円
      ※100円玉をたくさん準備しましょう。(おつりをいただくのは、後ろの人にも迷惑です。)
        掛け軸なら、400円。車の方は、お寺によって駐車場代も100円程度払います。
     ろうそくも、2*88=176本
      ※お寺に有料であるときも。(お供えだと思って、そのろうそく・線香もいいですね。)
       小さなものをいつも50本くらい持っています。
     線香も、3本が基本ですから、3*2*88=528本
      ※お値段もピンからキリまでありますね。毎日香のでかい箱で購入して、100本くらい持っています。
       3本ずつ下を紙で巻いて準備されている人もいます。
     お写経も、2枚*88=176枚ですよ!!
      ※一度にたくさんのお寺をお参りなら、大変ですよ。日ごろから、時間を見つけて書きましょう。
        私、ストックを300枚ほど持っています。毎週土日に書いてます。

数珠(じゅず)
  仏様を拝む時に手にかけます。お参り用は普通、尺二寸(本連)の物を使用します。
  でも、ご自分の宗派の、いつものでいいですよ。くれぐれも忘れないで。

  これもピンからキリまであります。持ち歩くものですから、高価なものはどうでしょう。
  しっかりしたものを選びましょう。わたし、いろんな仏様にこすり付けて、ご利益をいただいて
  何本か壊れましたよ。今は、「高野槙」の本連。でも、5,000円もしていません。

  ※本連の数珠を、首にかけておられる姿をときどき見かけますが、修験者はしりませんが
   一般の方は、しないようにしてください。持ち歩くときは、左手で包むように持ちます。

納め札  
  本堂と大師堂に奉納する札です。このお札に住所、氏名、年齢を記入し本堂、大師堂に納めて、
  ご本尊さま、お大師さまに参詣のご報告をします。
  ひとりの修行者として、お札を霊場に残します。お札は、修行者が行の証に、行場に師や施しを頂
  いた方に差しあげるものです。
  1  本堂に一枚、お大師堂に一枚納めます。(納め札入れが各寺の、本堂と大師堂にあります。)
  2 お接待を受けた時も、一枚差し上げます。(すぐに出せるように、手元に何枚か準備します。)
  
    白い納め札は1回〜4回 
    緑の納め札は5回以上7回
    赤色納め札は8回以上24回
    銀色納め札は25回以上49回
    金色納め札は50回以上
    錦札は100回以上お遍路された方が使います。 

  50枚綴りで、売っています。でも200枚は必要です。どこかで買い足しながらでいいですよ。

納経帖(ご朱印帖)
  大きさも中の様式もいろいろあります。京都の東寺さんや高野山にも売っています。
  アドバイスとしては、後ろに白紙のページが付いているものがいいですね。札所だけでなく
  別格や番外札所、奥の院などの御朱印もいただけたらいいですね。
  ※30番さんは、以前は番外さんが札所でした。高知城近く。やはりお参りしたいお寺です。

御影用保存ケース  
  各札所で、ご朱印をいただくと、3cm*10cm程度のご本尊のお姿をいただきます。
  それをケースに保存するノートです。まあ、紙の袋を1番さんでいただいて、入れていっても
  いいのですが、忘れたり、落としたり、・・きちんと入れていくほうがいいでしょう。
  (札所によっては、一枚きちんとわたしていただけたり、自分でとっていくようにいわれたり。)

  わたしは、1セットを家で額に入れて、八十八ヶ所御影(みえい)として飾っています。
  カラー御影は、有料200円です。この御影のお軸もありますが、現在お姿には御朱印は
  もらえません。

その他
  手甲、脚半、地下足袋など、昔ながらの旅装束です。
  私は、真夏のお参りに手甲をしています。日差しにはいいですね。
  冬には、軍手がいいですね。また、夏用の菅笠につけるレースの日よけ。
  外を歩くと、舗装道路の反射がきつく、サングラスも。
  トンネルなどを歩くなら、反射板や杖に反射テープを貼ります。

  は、実は大きなポイントです。
  合わないと、靴擦れや水ぶくれになり、歩けません。専門店でプロに相談するのがいいですよ。
  車でも、トレッキングシューズや運動靴です。(駐車場から山道やすごい階段がいっぱいです。)
  できたら、ゴアテックで防水のもの。底が厚いもの。足首を守れるもの。

  リュックも登山用品店で相談するのがいいですね。私は、7kgが限界です。35リットル。
  ご自分のお参りのスタイルに合わせて、選びましょう。雨用リュックカバーも。

  雨具。合羽ですね。菅笠(ビニール付き)はいいですよ。(柿渋加工なら、ビニールいらず)
  わたしは、ポンチョです。リュックのままで上から着ることができます。傘は手がふさがるので×
  ひざから下には、足カバーを巻きます。(杖をつきますので、右手が濡れるのが難点ですが。)

  洗濯用小物・・・旅行用のロープや洗濯石鹸などありますね。洗濯機は、ビジネスホテルでもあります。

 ☆経本
  数珠や経本は、もしご自宅にあれば持参ください。ただ、「四国八十八ヶ所勤行次第」という
  ものが、あることはあります。団体さんが、先達さんのリードで勤行されているのもそうです。
  基本は、在家信者用の「日常仏前勤行次第」です。
  できれば、購入され持参するのがいいです。学生さんなどは、コピーを持っておられます。

  お経をあげるときは、お坊さんでも経本をきちんと持って、詠むのが基本です。
  なにも見ないで、大声で読む人がいますが、決してほめられるものではありません。
  大きな字の、自分がいいと思うものを持ちましょう。私は、自分なりのものを作って持っています。
  ※実は、勤行次第は基本の順番を守りながら、組み合わせて自分なりのものを作れます。

  最初は、恥ずかしくて、たどたどしくて、ふりがながうまく読めなくて、・・。
  実は、みんなうまくないですよ。人の姿でなく、自分の気持ちで、仏様に聞いてもらいましょう。
  ゆっくり、あわてすに。抑揚はつけないのが基本です。へんな癖がつきませんように。

  ※うまく詠むこつ・・・雨だれの如く、よどみなく、流麗に、耳を傾けて、同調します。
              リズムを守って。だいたいは、漢字4字ずつ読むのがこつ。
              (お経は、中国語に翻訳されて、日本に来ました。漢文です。
               四六駢儷体といって、4音形式がリズムになっています。
               だから、意味や文の区切れに関係なく4音ずつです。)

[参拝の作法]・・一応手順だけ、ご紹介します。(勤行次第は、「お参りの方法」を参照ください。)

 階段から境内まで、すべて左側通行が基本です。

山門に入る前に、一礼(合掌)する。 (向かって、左側に立ちます。)
  門まで、仏様がお迎えに来てくださっています。

手を洗い、口をすすぐ
  真っ先に、手水場にいってください。
  近くのベンチで、輪袈裟・念珠などの準備(車なら駐車場で)

本堂に行き、ローソク・線香をあげる。
  他の人の火から着けない。ろうそくは、1本。線香は3本。

  納め札写経を奉納する。
   入れる箱があります。

 「仏前での作法」(もっとも短い勤行の例)

一、 合掌礼拝(がっしょうらいはい)
二、 開経偈(かいきょうげ)   続いて 懺悔文(さんげもん) 
三、 般若心経(はんにゃしんぎょう)一巻      
四、 御本尊真言(ごほんぞんしんごん)三返  (お参りしたお寺のご本尊の真言をとなえます。)
      お堂や柱に「ご真言」のプレートがあります。まちがわないで。
五、 光明真言(こうみょうしんごん)三返
六、 南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)三返
七、 回向文(えこうもん)一返
八、 合掌一礼


 ほっとして、杖を忘れるんです。

つぎに大師堂に行き、上記の同じ事を繰り返す。 (四だけ抜いて)

 また、杖入れに入れた杖を忘れます。

 一通りお詣りが済んだら、納経所で納経帳に記入いただき、朱印を押してもらう。

 ご納経
  各札所でお経を唱えた(写経を奉納した)しるしにいただくもの。一生のお守りであり、
  悩みのある時は、これを礼拝します。また、ご軸(納経軸)は家宝として、帳面、白衣は、
  重ね印といって、二回、三回とお参りするたびに最初の同じ帳面、白衣に印を重ねていきます。


最後に山門を出る際に、一礼をして次の寺に向かう。
  左側通行ですから、山門でも出口に向かって、左です。

※ 巡礼中トイレに行く時は必ず白衣・杖・笠・数珠・わげさ等は、外して持ち込まないで。
    


[巡礼用語集] 参考に

遍路   信じるものを心のよりどころに、霊場をめぐる旅をする人を指す。
      また、その行程のことを指す場合もある。 「お四国」ともいいます。

同行二人 「どうぎょうににん」と読む。巡礼の旅にはいろいろ困難をともなうが、いつも弘法大師が一緒に
       あるいてくれると信じて巡礼すること。大師の身代わりとして杖を持つにはそういう理由がある。

札所   八十八ヵ所の霊場のこと。

打つ   霊場にお詣りすること。昔は板に書いた納め札を、打ちつけていったことから、この言葉が
      残っている。「何番を打ちました」といえば何番かにお詣りしたこと。

順打ち 一番、二番、三番というふうに札所順に巡拝すること。

逆打ち 札所を逆番に巡拝すること。例えば四十三番から四十二、四十一、四十と進むこと。
     弘法大師は今も生きており、順打ちで回り続けているため、逆打ちすることで大師に
     会うことができるいう言い伝えがある。

一国まいり 四国のうちの一国を詣ること。たとえば阿波(徳島県)なら二十三ヶ所を巡拝する
       ことをいう。毎春一国、または春秋に二国を巡り、四年がかりまたは二年がかりで
       全霊場を巡拝する人もいる。

同行さん 遍路同士が相手を呼ぶときに言う。

おせったい 遍路に物品、金銭などを与えもてなすこと。遍路はそのお礼に納め札を渡す。

「お参りの方法」を参照ください。
ご質問の方は、ご連絡ください。


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