お参りのお経の話

  四国88ヵ所遍路巡礼に出ようとされておられる方や、区切り打ちで何度か参拝されておられる方で、団体でなく個人でのお参りの多くの方々が、戸惑い、悩んでおられるのが、お経のあげかたですよね。

 そこで、お四国に限らないのですが、特にお四国に特化した、お経についてお話しします。

(1)ほとんどの方が、1番霊山寺前のお店で、「巡礼四国 仏前勤行法則(次第)」などの経本を購入されます。ネットでのセット販売にも、同様の経本がついてます。大きい字のや、全札所のご本尊真言の書いてあるもの、御詠歌入りや中には、プリントのようなものもあります。

 ※選ぶポイント・・・信仰形の方なら、少し厚いですが、『真言宗檀信徒勤行経典』など、「理趣経」もあるのがいいかもしれません。・・・まったく初めてでしたら、とても大きな字で、振り仮名もはっきりしているものもあります。

 中身ですが、おそらく初めてでしたら、目次を見て選ぶなんて無理です。もう、出版元を信じるしかありませんよね。

 実は、もし今手元にお持ちなら、出して見てください。 「目次」のあるものや、ないのもありますが、お経の項目をみましょう。

 合掌礼拝・・・薄いものには、ないですね。経本をささげて、申し上げます。
 ★開経偈 ・・・初めに、この「開経偈」が来るのが多いように思います。
 ★懺悔文 ・・・私の持っている「真言宗」の経本では、「開経偈」より先。
    三帰・三竟・・これは、大乗仏教の在家の誓です。
    十善戒 ・・・在家は、10の戒めを誓います。
    発菩提心の真言・・仏様との会話
    三摩耶戒の真言・・仏様のことば
 ★般若心経・・・「仏説」とついてあるのが、真言宗。
 ★ご本尊真言・・これは、88カ寺のそれぞれの札所のご本尊です。
          すべて書いてある経本もありますが、各お寺の柱などの
          銅板で貼ってありますから、この時は、顔をあげて、きち
          んと読むのがいいですね。
 ★光明真言・・・一言でいえば、大日如来をはじめ、全ての仏様に祈願
            する真言です。
 ★ご宝号 ・・・弘法大師に帰依します。
 ★廻向 ・・・・漢文のか、和文のかどちらかです。
          (おへんろでは、和文が多いかと。)
   お礼  ・・・経本をささげて、お礼を申し上げます。

   (★印が、最小の勤行次第です。)

(2)読経の順番や各お経に、どういう意味があるのでしょう。それを理解して、自分ならこのお経は読みたいとか、これは長いから割愛しようとか、その時に応じて、選べばいいでしょう。

 合掌礼拝・・・経本をささげて、申し上げます。 「うやうやしく、み仏を 礼拝(らいはい)し たてまつる」黙ってお念珠をすってもいいですね。一礼します。

★開経偈 ・・とても大切な仏様の教えを、いま読み上げる喜びを申しあげます。「これから、お経を読みます。」と宣言します。

★懺悔文 ・・いままで多くの罪を犯してきました。ここに、懺悔いたします。 「ざんげぶん」ではなく、「さんげもん」といいます。

わたしは、先に「懺悔」してから、お経を読む前に「開経偈」とします。

 三帰・三竟・・これは、大乗仏教の在家の誓です。
   これからのお経は、基本的に3回繰り返しながら、進むのが基本です。深く「仏・法・僧」と「仏竟・法竟・僧竟」に帰依します。
同じものを三回はつらいです。私は、ゆっくりしたとき以外は、一回ずつです。

 十善戒 ・・・在家は、10の戒めを誓います。これも、三回です。上の「三帰・三竟」とこの「十善戒」は、読むときに、
   「弟子某甲 尽未来際」という言葉がついています。 「この身今生より、未来を尽くすまで」(永遠に誓い、従います。))

 発菩提心の真言(必ず3回)・・仏様との会話 「私は、菩提心(悟りを求める心)を起こします。」と仏様に誓います。

 三摩耶戒の真言(必ず3回)・・仏様のことば
  「あなたは、私(仏)と平等である。」(実は、これは仏様の答えです。)このご真言は、普賢菩薩のご真言と同じです。私は、普賢印を。

 ★般若心経・・・「仏説」とついてあるのが、真言宗。
           
 仏説 摩訶 般若波羅蜜多 心経
  やはり最低限『般若心経』は覚えなくてはいけないと思うようになります。

  いろいろ調べてみますと、宗派や個人のお坊さんでも部分的に違うのです。・・・経典の解釈や教えのよって、異なるようです。自分の宗派や覚えているほうでいいと思います。

 眼で見て、耳で聞き、手で書いて、口で唱えると意味が分かってきます。 (眼 耳 鼻 舌 身 意)そのとおり、最初は覚えられるかなあと思って いましたが、何度も繰り返すと覚えるものです。

 ただ、前述しましたが、できるだけ癖のない唱え方がいいですね。

 お遍路に出ていると、たくさんの団体や個人の方々と出会いますが、結構くせがきつくて、妙な節のある唱え方を聞きます。

教えでは、「雨だれが落ちるように、よどみなく一定のリズムをもって唱える。」のだそうです。後述しますが、お経を唱えるコツは、4字ずつ区切って詠んでいくことです。 (先達講習会で、こんなふうに説明されていました。)

・・意味を考えて、詠んでいくと乱れます。詠むときは、意味でなく、リズムを大切にします。うまく理解していくと、息継ぎが意味の切れ目と、リズムの切れ目が合うところにできていきます。(これは、至難の業ですがね。)

・・知識です。お経はインドから中国に伝わります。そして、中国から日本に伝わりました。大乗仏教ですね。その時代や中国での、ヒンズー語から中国語への翻訳の過程で、当時の韻旋律(四六駢儷体)が、詩文としてリズムをもって適用されたようです。だから4.4.4.4.・・と区切って詠むと、もくぎょうや錫杖のリズムで詠めるのですね。

・・知識です。平安仏教では、お経の読み方に「声明(しょうみょう)」という旋律をつけて詠み方が伝わりました。真言宗や天台宗に今も伝わっています。日本の歌謡曲の原型だとも言われます。

(音で区切る)・・・手でトントンとリズムをつくって詠んで見てください。二字ずつ区切って、読んでいきます。(2箇所くるうところがあります。)

仏説  摩訶  般若  波羅 蜜多 心経  観自  在菩薩  行深
ぶっせつ まか  はんにゃ  はら  みた  しんぎょう かんじ  ざいぼさ  ぎょうじん

般若 波羅  蜜多  時照  見五  蘊皆 空度  一切  苦厄
はんにや はら  みた  じしょう けんご  うんかい  くうど  いっさい  くやく

舎利  子色  不異 空空  不異 色色 
しゃり   ししき  ふい   くうくう  ふい  しきしき

(意味で区切る)対訳
仏説 摩訶 般若波羅蜜多 心経  観自在菩薩 行深 般若波羅蜜多時照見五蘊皆空 度一切苦厄  舎利子 色不異空 空不異色 色即是空 
  
さて、長くなりましたが、「般若心経」ですが、もっともポピュラーで、もっとも有名なお経ではないでしょうか。浄土宗や浄土真宗などでは、お唱えしませんが、ほかの宗派ではたいてい詠みます。

お大師さん(弘法大師)の「般若心経秘鍵(はんにゃしんぎょうひけん)」という著作があって、それを読みますと、お大師さんの解釈がすこしだけ見えます。それで、その中身をつないで私なりの意訳をさせていただきました。ひろさちやさんの心経 前田孝道師の心経 

 特筆すべきは、「心経のご真言」だと思います。
『ぎゃあてい ぎゃあてい はらぎゃあてい はらそぎゃあてい ぼんじそわか』

いろんな方の訳をみて、初めて気づいたのは、このご真言は、悲しみではなく祝福の語であるということです。昔から言われていることですが、本来なら生きているうちに仏道に帰依し、信仰を深めなければならないのですが、衆生はそれが足りない。だから、死んだときに生きているうちの修行をまとめてする。それが、いつの間にか葬式だけの仏教になってしまったのだとか。

ぎゃぁてい  ぎゃぁてい  はらぎゃぁてい  
行き行きて、行ける者よ、彼岸に行ける者よ、行きて、静かな涅槃の境地に至り。去り去りて、去れる者よ、彼岸に去れる者よ、去りて、根源的なさとりに入る。

はらそうぎゃぁてい ぼんじそわか
彼岸に全く往ける者よ、さとりよ、幸あれ。

ですから、わたしは、最近いつもお葬式では、ここから極楽浄土に成仏くださいねと送り出しています。お四国の札所では、ご本堂と大師堂の二箇所で必ずお唱えします。このときは、仏の深遠な教えによってお守りください。深く帰依申し上げますと、お唱えしています。

★ご本尊真言・・これは、88カ寺のそれぞれの札所のご本尊です。すべて書いてある経本もありますが、各お寺の柱などの銅板で貼ってありますから、この時は、顔をあげて、きちんと読むのがいいですね。

一番難しいのが、ご真言です。だって、意味も単語の区切りもわかりませんよね。わたしは、市販の本や高野山で販売しているCDなど、お坊さんが唱えておられるのを聞いて覚えました。でも、宗派やお坊さん個人でも違うんです。困りますね。

 (例) お地蔵様 おん かー かー かびさん まえい そわか おん かか  かびさん まーえい そわか

そっとお坊さんの言葉に、聞き耳を立てましょう。先達さんも、それぞれです。

★光明真言・
・・・一言でいえば、大日如来を始め、全ての仏様に祈願する真言です。見方によっては、最強のご真言です。すべての仏を代表する真言。だから、今の札所のご本尊が、最初で、つぎにその他のすべての仏に敬意を示します。 

★ご宝号 ・・・弘法大師に帰依します。
  順番からいって、そうでしょう。「南無」は、「帰依します。」という意味。

自分の御先祖や故人の戒名なども、ここで唱えます。南無 ○○家先祖代々一切精霊 なんて添えます。

★廻向 (普廻向)
・・・・漢文のか、和文のかどちらかです。(おへんろでは、和文が多いかと。) わたしは、お遍路に出たら、札所では和文です。
   家での月命日などでは、漢文調のです。

お礼  ・・・経本をささげて、お礼を申し上げます。

 いかがでしょう。少しは、お経の疑問に、お答えできましたか。
 また、何か疑問に思われたら、ご連絡ください。一緒に調べ勉強しましょう。

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