観音巡礼(8)   [青岸渡寺・補陀洛山寺]


 平成20年8月25.26日、夏休みの特別休暇が後二日残ってて、最後の
  あがきのようにどこかに行きたいと考えました。

 そう、どこに行こうかと思ったら、西国巡りですよ!一泊なら、1番青岸渡寺、
 那智の大滝。もうひとつ、ずっと以前から気にかかっていた、補陀洛山寺で
 すね。

 もう20年も前から、文学として補陀洛山寺のことは知っていました。信仰と
 自我意識の葛藤。明治以来の近代文学は、日本人の自己意識の目覚めに
 多大に貢献します。

 今回、私も年齢的にやっと受け入れられるようになってきたのでしょうか、
 信仰としての補陀洛山寺の上人の葛藤の一端が、感じられる気がします。



 さてさて、夏休みの旅は、世間的には世界遺産那智への旅です。大阪天王寺から特急くろしおに乗って
 勝浦に向かいます。和歌山市までは、阪和線、そこから紀勢本線ですね。私は堺の人ですから、途中までは
 地元です。実は、海南のひとつ手前の「黒江駅」は、6年間通った末の娘の智弁和歌山高校ですよ。

 更に、20歳台、私は磯釣りに凝っていまして、紀伊半島のほぼすべての磯にのっています。国道42号線
 は、熟知。その上、国道168.169号線といって、紀伊半島の真ん中を縦断する道があります。この道は、
 奈良の五条市から熊野本宮、新宮に出ます。もうひとつは、橿原から吉野を通って大台ケ原を抜ける道。
 真冬に凍結・積雪で死に掛けた道。

 いろんな思い出が車窓からの風景に重なります。やっぱり白浜までは、混んでいましたね。韓国の人たち
 も乗っています。サファリパークかな。

 串本は、本州最南端。海は、少し白波が立っています。どんより曇っていますが、雨はまだです。
 鯨の町太地。次が勝浦です。ここも温泉地で有名です。また那智のお参りですものね。

  朝、8:10天王寺発で、勝浦には、11:30着。早速バスで、那智の滝に向かいます。以前、西国めぐりの時は
 車でした。今度は、乗り合いバス。熊野古道が有名になって、大門坂で下りる人もいます。じつは、前回は
 車だったのですが、がけ崩れ通行止めで、何も知らなかったのですが、大門坂駐車場で止められて、歩いた
 のですよ。今回は、雨が怪しいしお四国ではないので、一番上の那智大社までバスです。

 大駐車場で、バスは終着。すぐ側に本殿までの石段があります。真直ぐかなりののぼりです。竹のお杖を
 借りて上ります。最近やはりお四国で慣れたのでしょうか、少々の坂や階段も大丈夫です。

    

 やっと上って、青岸渡寺の山門に着くと、待っていたように雨が降ってきました。というより、雲が下りてきて
 回りが、すべて雲の中に吸い込まれていきます。慌てません。リュックには、足カバー、リュックカバー、防水の
 帽子に、ジャンパー。人から見たら、熊野古道を踏破した人みたいですね。

 本堂に入り、ここは天台宗ですが、お四国と同じ真言宗流のお勤めを。御朱印をいただきました。また、那智香
 を買いました。最近は、お参りしたお寺のお線香を買うのが楽しみです。お写経のときに思い出しながら香りを
 楽しんでいます。

   

 続いて、隣の那智大社にお参りです。土砂降りに近くなってきました。境内の楠木の胎内くぐりをしました。
 「心願成就」です。『神武天皇が熊野灘から那智の海岸“にしきうら”に御上陸されたとき、那智の山に光が
 輝くのをみて、この大瀧をさぐり当てられ、神としておまつりになり、その御守護のもとは、八咫烏(やたがらす)
 の導きによって無事大和へお入りになった』という伝説があります。

  

 真っ黒な、巨大な八咫烏(やたがらす)は、神のお使いです。サッカー協会のシンボルマークの「ヤタガラス」
 がこれです。

  

  

 さて、お寺の境内を下りていきますと、三重塔。本当なら、塔の右横に雄大な大滝がみえるのですが、轟音
 が聞こえるのですが、まったく見えません。その音に包まれるように、さらに下に下りていきます。

 大滝です。地元の人が、「本当なら、滝の水が岩に当たって、観音様に見えるんですよ。」と教えてくれました。
 また、「雨の日は、普通のお参りの三倍ご利益がある。」とも。実際に、「今日はいつもの倍以上の水量ですよ。」


 すごいです。300円払って、更に滝のふもとまでいきました。
 すでにずぶ濡れですから、躊躇はありませんよ。
 私には、「観音様」というよりも、「お不動様」に見えますよ。

 お参りの後、今度は坂道を登って、バスの乗り場まで戻ります。
 途中のお店で、とっても気になったのは、「黒飴ソフト」。あの有名な
 「那智黒」ですよね。どんなものなのでしょうね。でも、実はお昼すぎて、
 お腹が減っていますので、ソフトより「めはりずし」。和歌山の名物です。
 お寿司というよりも、菜っ葉で巻いたおにぎりです。「いのししうどん」も
 あったのですがね。次回の宿題にします。

  

 雨の中、バスで勝浦まで戻ります。チェック!JR那智駅側に
 「補陀洛山寺」があることを。明日の朝から行く予定です。

 翌朝、8:30に宿を出ました。雨でなかったら宿から歩いて、2.3kmくらい。でもいつ降ってきてもおかしくない
 空模様です。勝浦から那智大社行きのバスで、10分。JR那智駅前で下車、徒歩3分。駅から真直ぐの参道を
 進むと、鳥居があって熊野三所大神社が正面。その左横に補陀洛山寺があります。

    

 本堂左の建物には、あの補陀洛船が展示してあります。周りに真っ赤な鳥居が4つ。小船の真ん中に小屋風
 で、そこに上人が入るのですね。中は狭いです。


  

  浄土を願う気持ちは、いつの頃からか人々に共通です。ただ、 信仰として切ないほどの辛さを感じながら、
 わたしはあの船を見ましたし、船の後ろ側に は、線香・灯明があって、思わず手を合わせました。それは、
 タイムマシンでもなく、宇宙船でもありません。切なる祈りの究極の姿が、重ねて見えたからです。

 神社から、真直ぐ海まで200 m。JR紀勢本線の下を地下道で掘っていますが、まっすぐ海にでます。
 波打ち際まで歩 きました。外から釘打ちされた船は、曳航されて沖まで出て、綱を解かれます。潮流に任 せて、
 はるかニライカナイの観音浄土に。船には、数日間の食料でしょう。何を思い、何に 引かれて行ったのでしょう。

    パンフからの転写。11月に、お寺で地元の劇団の公演が。

 「いく」は、「逝く」でしょうか。「ギャーテー ギャーテ ー ・・・」=「行く者よ 行く者よ 行く者に 幸あれ!」
 思わず、般若心経のご真言が、口をつきます。
   http://www.sakai.zaq.ne.jp/piicats/hudaraku.htm 「ふだらく」についての考察

 感動のまま浜辺に出て、波打ち際まで真直ぐにあるきました。すでに、夏の浜辺の家も解体され、だれもいない
 浜辺に立ち尽くしていました。海は、太平洋。真南です。

 

 ちょうど、JRの電車が着ます。二駅乗って、勝浦駅。10:35のくろしおで大阪に戻ります。
 駅弁は、マグロステーキ弁当。くじら弁当と迷ったのですがね。いい旅でしたよ。


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