写経のすすめ 2

 お写経は、こころを静め、すがすがしい思いになります。
 きちんとしたお作法もありますが、ふと思い立った時に、自由に書けたらいいですよね。

 お寺でも、お写経をさせていただけます。定例でお写経の会をしているところもありますね。
 私は、数度経験しました。比叡山横川中堂でも。京都醍醐寺では、十句観音経。高野山大師協会。また宿坊でも。
 薬師寺では、お写経専用の施設もあります。

 もちろん写経用紙をいただいて、家で書いて送るものも、あります。弘法大師が書き残したとされる多くの「写経」が残っています。そんなエピソードをUPしたいと思います。

 お写経は、時間があれば硯に墨をすって、筆でじっくり書きたいものですが、筆ペンでも何も遜色ないでしょう。

 この画像は、墨の種類です。京都の泉涌寺では、朱書きの写経会をされています。ここでは、金泥、青墨、茶墨です。
 見たことがあるでしょうか。ブルーの写経用紙に金や銀で書かれたお経。一度は書いてみたいですよね。

 以前、娘が京都に住んでいた時に、鳩居堂で、藍染めの用紙と金泥の墨をプレゼントしてもらいました。とても高価だったようです。つたない書ですが、なんとか書いて、父母が眠る高野山奥の院灯篭堂に納めました。

 後日、仏教美術の先生に教えてもらったのですが、金で書いたお経文字を、鹿の角で磨くらしいです。1000年間色あせず、しかも藍染めなら虫に食われたり腐食もせずに、ピカピカのまま残るらしいです。

 一般的には、書では青墨(松のヤニの墨=松煙)を使うようですが、何かで読んだのですが、お写経は茶墨(菜種油のろうそくの煤を練って作ります)がいいとか。私には根拠はわかりませんが、確かに色合いが違います。

 奈良の若草山から手向け神社、二月堂の方に抜ける道に、小梅園という墨のお店があります。いつも奈良に行った時には寄るのですが、陳列の墨はとても高価です。でも、欠けたり割れたりした墨を廉価で売っています。以前、ここで茶墨を手に入れました。こんなので書いただけで、なにかとてもありがたいですよね。

 

 もうお写経は、何枚も書いていますので、下に写しの手本を入れたりしません。
 お四国などでは、一つの札所で本堂と大師堂の二枚必要です。お参りする時は、やっぱり奉納したいですよね。

 また、他のお寺などでは、お写経を奉納するのにいくらかの費用がいるところも多いですよね。四国に慣れていると、なんだか少し抵抗があるのですが、私だけでしょうかね。



 このお写経を、高野山奥の院に納めました。初めて書いた金字の心経です。



 これは、高野山宿坊一条院のお写経です。泊まったときに部屋で書きました。お写経をお願いしたら、部屋にお香も準備していただき、心静かに書きました。翌朝、ご本堂に納めました。



 これは、奈良長谷寺の観音経偈文のお写経用紙です。お寺で購入して、家で書きます。そして封書で送るんです。ご祈祷していただけます。一枚は、四国別格のお念珠を作って、亡父の代わりに叔父さんに、桐の箱に入れてプレゼントしました。



 これは、京都東寺で購入した写経用紙のお手本です。お大師さんのご宝号があります。


 平城宮の鬼門に位置するところにある海竜王寺では遣唐使の海上安全を祈願して 多くの写経があり、その写経を隅寺心経といいます。一部の写経から「空海之印」の印があったところから弘法大師の書と伝えられている「伝弘法大師の心経」です。



 海印寺(かいいんじ、ヘインサ)は、韓国慶尚南道陜川郡にある寺院。韓国仏教界の最大勢力である曹渓宗(大韓仏教曹渓宗)の三宝寺院、五大叢林(海印叢林)に数えられています。そこには、高麗八萬大蔵経の版木が保管されている大蔵経板殿は世界遺産に登録されています。その写しを、以前知人からいただきました。

 お写経をしていますと、いろんなお手本を見ますが、みんなそれぞれ微妙に字が異なります。なにが正しいのかではなくて、もともとが音の伝承で、それを書き写した人の音を文字化するときの違いもあるでしょう。

 大事なのは、字ではなくて、書き写す私たちの心の持ち様なのでしょうね。初期仏教から、釈迦入滅後、大乗仏教にうつるころに「経文」(教えの文字化)が、「経典」崇拝の意識にまで昇華していきます。ですからこそ、今ではお教本を頭上にかかげて拝礼し、書き写した紙にも敬意を感じます。

 お写経を初めた頃は、かき終わった用紙をどのように折ればいいのか。四国に持参する時、なにに入れたらいいのかまで、気遣ったものです。しばらくお四国から遠ざかっていて、ストックがかなり増えてきました。