四天王

 佛教では帝釈天・梵天と共に法の護法神として登場する。
歴史は元来はインドに於ける方位の守護神として信仰されていた神であり、古くBC二世紀頃にはパールハットに存在している、四天王は釈迦の説法を聞き佛教に帰依し釈迦から入滅後に法を守護するよう託された。

須弥山の頂上の宮殿に住む帝釈天の部下として自身も多数の配下を従えて四方の門を守っている。
東門・持国天・ドリュタラ―シュトラ・提頭頼叱(だいずらたの訳)  
南門・増長天・ビルーダカ・毘楼勒又(びるろくしゃ)の訳)  
西門・広目天・ビルーパークシャ・毘楼博又・びるはくしゃの訳)  
北門・多門天(ビャイシュラバァナ・毘沙門)という役割である。

四天王信仰は飛鳥時代からあり聖徳太子が物部守屋との戦いで戦勝祈願したのが四天王であり、勝利の後四天王寺を建立したことが日本書紀に記録されている。

四天王信仰は国家の繁栄や安泰の祈願にも推移して東大寺の正式な寺名であるる金光明四天王護国之寺などが建立され須弥壇の四方に置かれるようになった。姿形としては一面二臂で怒りを表し、衣と甲冑をまとい中国の武将形をして邪鬼・鬼座の上に乗る。

姿形としてはインドに於いては貴人として制作されたが、中国において武人の姿に制作されるようになり我が国に伝わった。

持物は様々であり剣・鉾・戟・巻子等を持つが広目天は筆を多門天は塔持つ場合が多い。

また四尊をまとめての信仰であるが例外的に多門天(毘沙門天)だけは独尊で信仰されている。

飛鳥時代から平安中期まで栄えた崇拝も次第に衰えていったが芸道・武等集団などの優れた人材を四天王と呼ぶ習慣が残った。

また多門天以外には個別信仰は少ないが
持国天は国を支える・
増長天は五穀豊穣・
広目天は佛心及び悪の処罰・
多門天は福及び護法等の力を持つといわれる。



広 目 天 (こうもくてん)
                     ご真言    おん びろばくしゃ のうぎゃ ぢはたえい そわか
         種字 ビ-

四天王の西を担当。須弥山の西牛貨洲(せいごかしゅう) を守る。
彩色される場合は肌色系。筆と巻子を持つ。
 四天王の一人で、西方を守護する。西午貨州の守護神。梵名は「ヴィルパークシャ(異なった目を持つ、もしくは醜い目を持つ)」で、「ヴィ」に「広く多い」という意味があるため広目天と訳される。また直訳して「醜目天」とも。龍族を眷属とする。「異なった目・醜い目」とは「第三の目」のことであり、得物も三叉戟(トリシュール)であることから、シヴァと関連づけられても考えられる(ただ、広目天自身には第三の目はない)。三叉戟、索に象徴される。真言は「オン ヴィハタシャ ナガヂハタエイ ソワカ(オーン 広目天よ 龍族の主よ スヴァーハー)」。
 四天王の一天。西方を守護し、龍王をしたがえる。
 ヴィルーパークシャ(Virupaksa, virUpAkSa)。通常ならざる目をもつもの(virUpa-akSa)という意味あいをもち、シヴァ神の異名にも通ずる。武器も三叉戟(トリシューラ trizUla)をもつことから、シヴァを系統とする天である。(岩波仏教辞典 参照)


多 聞 天 (たもんてん)
                     ご真言    おん べいしらやなや そわか
         種字 ベイ

四天王の北を担当。毘沙門天と同一です。漢字で書くとまったく別の神様のようになりますが、
毘沙門は梵語の音写で、意味は多聞とか普聞と訳されます。須弥山の北倶盧洲(ほっくるしゅう)を守る。
彩色される場合は紺青系統。右手に宝塔を乗せ、左手には宝棒を持つ。
 四天王の一天。北方を守護し、夜叉をしたがえる。四天王最強の天。毘沙門天と同一。
毘沙門天(びしゃもんてん)
 須美山の北方、そして北倶盧州を守護する最強の四天王。正しくは、単独で信仰されるときが毘沙門天、四天王として信仰されるときは多聞天と呼ぶ。ヒンドゥーのヤシャ王クヴェーラがその由来であり、軍神であるほかに財宝神としても信仰される。「ヴァイシュラヴァナ(聖仙ヴィシュラヴァスを父とすることから)」とも呼ばれ、毘沙門の名はそれを音訳したもの。配下として夜叉や羅刹を従える。宝塔を所持することから托塔天王とも呼ばれ、道教では封神演義に出てくる李靖のこと。すなわち、中壇元帥ナタクの父親である。真言は「ノウマク サマンダボダナン ベイシラマンダヤ ソワカ(普き諸仏に帰命し奉る 毘沙門天よ スヴァーハー)」。
 もとはインドのヴァジュラヴァーナ。四天王の多聞天の別名。吉祥天を妻とする。勝軍と富の武神。また、夜叉の主領ともいわれる。十二天のひとつ。七福神の一神でもある。


持 国 天 (じこくてん)
                     ご真言    おん ぢりたらしゅたら らら はらまだな そわか
         種字 ヂリ
 帝釈天の住まう須美山の東を守護する四天王の一人で、東勝身州の守護神である。サンスクリット語では「ドゥリタラーシュトラ(国土を支えるもの)」。その起源は「マハーバーラタ」に登場する、インドラ配下の盲目のガンダルヴァの王で、そのことから持国天自身も乾闥婆と毘舎遮を従えるとされる。刀を主要な武器とし、摩尼宝珠を持つ。真言は「ノウマク サマンダボダナン オン ダリタラシタラ ララ ハラマダナ ソワカ」で、意味は「普き諸仏に帰命し奉る 持国天よ ララ 傲慢なる尊よ スヴァーハー」。
四天王の東を担当。須弥山の東勝身洲(とうしょうしんしゅう)を守る。
彩色されるときは緑青系。兜をかぶり手に剣を持っている。
帝釈天の部下の四天王の1人で、須弥山の東方を守護する。ガンダルヴァ(漢語では、乾闥婆)の王でもあり、釈尊が羅閲城に入り乞食をしたとき東方よりガンダルヴァを率いて来て待従した。

増 長 天 (ぞおちょおてん)
                     ご真言    おん びろだきゃ やきしゃ ぢはたえい そわか
         種字 ビ

四天王の南を担当。須弥山の南贍部洲(なんせんぶしゅう)を守る。彩色の場合は赤系統。手に戟を持つ。
 須美山の南および、我々人間が住むとされる南瞻部州を守護する四天王。梵名は「ヴィルーダカ」で、「発芽し始めた穀物」という意味を持ち、五穀豊穣を司る。眷属は鳩槃茶、薜茘多。刀や鉾を象徴とする。真言は「ノウマク サマンダボダナン ヴィロダキヤ ヤキシャヂハタエイ ソワカ」で、「普き諸仏に帰命し奉る増長天よ 夜叉の長よ スヴァーハー」。これによると夜叉の長でもあるようだ。
 ヴィルーダカ (Virudhaka, virUDhaka)。ぞうちょうてんとも読む。鳩槃荼(クムバーンダ kumbhanda, kumbhANDa)等の鬼神を従える。

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