六観音(観音信仰)「仏像イラストはすべて(有)レイランドの著作物です。」


西国や秩父など三十三ヶ寺に於ける本尊は、宗派別に見れば、真言系15ヶ寺・天台9ヶ寺・
単立3ヶ寺などとなっており、六観音信仰が真言宗・天台宗の教義からの信仰である為、両宗
と関連の深い寺院で占められる。

六観音とは浄土信仰と共に中国で生まれたもので大悲観音・大慈観音など六尊を拝んで
輪廻から抜け出す手段とされた。

六観音は、基本形である聖(しょう)観音をはじめ、十一面観音・如意輪(にょいりん)観音・馬頭(ばとう)観音・准胝(じゅんてい)観音・千手観音の6つで、これに不空羂索(ふくうけんじゃく)観音をくわえて七観音とする。

観音さまというのは日本では恐らく一番信仰を集めている仏でしょう。この仏様は慈悲の心により、救いを求めている人があったらすぐにそこへ行って彼らを救済をすると言われており、如来様ほど恐れ多い存在でもないところから人気を集めたのではないかと思われます。

観音は観世音の略で、また観自在菩薩ともいいます。インドではアバロキテシュバラで意味としては観自在の方が正しく、観世音というのは誤訳だとも言われます。しかし観音という言葉がこれほど定着してしまった以上、それは大変意味のあることだと考えた方がよいでしょう。民衆は意外と真の名に敏感です。

短いお経として有名な般若心経の冒頭は「觀自在菩薩 行深般若波羅蜜多」となっています。あの三蔵法師もインドへの旅の途中繰返し繰返し般若心経を唱えていたといいますが、彼はその中で観音様の名前を何度も何度も呼んでいたことになります。

観音は衆生を救済に顕れる時、多くの姿をとると言われます。(観音経に書かれています。観音経もどこかでその内取り上げることにしましょう)

そういった信仰から成立したもののひとつがいわゆる六観音で、聖観音・千手観音・十一面観音・如意輪観音・馬頭観音・准胝観音です。(天台宗では准胝の代りに不空羂索を入れます)他に竜頭・滝見・威徳などを入れた三十三観音という数え方もありますが、その中にも子安観音等は入っていませんから観音の姿は全部で幾つくらいあるか見当がつきません。

この33という数字は観音様にとって重要な数字で西国三十三箇所とか京都の三十三間堂というりは、この数字を借りたものです。

その京都の三十三間堂には千手観音が1001体並んでいて壮観というか、いや、圧倒されるような雰囲気が存在しています。千手観音(大悲観音ともいう)の本来の形はその名の通り千本の手と千個の目を持っていて、千人同時に救済する力を持つさとれます。そのくらいパワーのある仏さまだからこそ人口がいかに多くても世の中の大勢の人を助ける事ができるのでしょう。

しかし三十三間堂の場合をはじめ多くの仏像の場合は手は(合掌する2本以外に)40本で、各々の掌に目があるという形です。これは1本の手で同時に25人を救済するというハイパフォーマンスの形式になっています。本当に千本の手が彫られている千手観音としては、奈良の唐招提寺のものなどが知られています。

なお、一般に言われる三十三観音をあげると次のようになります。

楊柳(ようりゅう)・竜頭(りゅうず)・持経・円光・遊戯(ゆげ)・白衣(びゃくえ)・蓮臥(れんが)・滝見・施薬・魚籃(ぎょらん)・徳王・水月・一葉・青頸(しょうきょう)・威徳・延命・衆宝(しゅほう)・岩戸・能静(のうじょう)・阿耨(あのく)・阿麼提(あまだい)・葉衣(ようえ)・瑠璃(=香王)・多羅尊・蛤蜊(はまぐり)・六時・普悲・馬郎婦(めろうふ)・合掌・一如・不二・持蓮・灑水(しゃすい)。

観音様は単独で観音堂の中に祀られる以外にも、阿弥陀如来の左の脇侍として、右の脇侍勢至菩薩とともに阿弥陀三尊の形式で祀られている場合もあります。また最近は背の高さが数十メートルもある巨大仏像としてもよく作られています。巨大仏像は鎌倉の大仏(ビルシャナ仏)や奈良の大仏(阿弥陀如来)などのように純粋に信仰上の理由で作られる場合もあります。

ところで、観音に例えば六観音があり、それは観音様の変化した姿と言われているのですが、これは裏側から見ればいろいろな神様が観音菩薩というところに統合されたものということも言えます。

 ・千手千眼観音・梵名:サハスラブジャ    ・真言:オン バサラ ダルマ キリク
              種子キリーク
千手観音は千臂千眼観世音、千臂観音、千光観音、千眼千首千舌千足千臂観自在ともいい、正しくは千手千眼観世音菩薩と呼びます。ちなみに千とは無量円満を意味する。全ての生き物と人々を救う事を象徴し「大悲観音」とよばれる。曼陀羅で蓮華部の中で最高の威徳を有する事から「蓮華王」とも呼ばれる。実際、千本の手がある仏像はまれで、だいたいは42本限られ、各手には持物を持つことになっています。また、十一面観音のように頭上に十一の顔があります。眷属として二十八部衆がつきます。六観音の一人です。

 ・十一面観音・梵名:エーカーダムシャカ  ・真言:オン ロケイジバラ キリク ソワカ
             種子キャ
十一面観音はヒンドゥー教の十一荒神が強化されたものと考えられている。変化観音の中では最も早くからインドで成立しました。頭上に十一の顔があり全ての方向を見つめて人々を救済します。
 普通、前3面は菩薩面(穏やかな顔、慈悲を現す)、左3面は分怒面(悪人を戒める)、右3面は狗牙上出面(優しい顔、人々を励ます)、後一面は大笑面(大笑いしている顔、悪行を笑い飛ばす)」、頂上は仏面(仏道に入った人に教えを説く)。各面は阿弥陀仏の宝冠を頂いている。

 このルーツははっきりしません。インドのルドラではないかという研究もあるようです。ルドラは風の神であり、シヴァの前世の姿であるとも言われます。なお、十一面観音といえば歓喜天像で聖天(ガネーシャ)と抱き合っている女神がこの十一面観音です。
 ・如意輪観音・梵名:チンターマニチャクラ  ・真言:オン バラダ ハンドメイ ウン
          種子キリーク              真言 オン・ハンドマ・シンダ・マニ・ジンバ・ラ・ソワカ

変化観音の一つ。梵名のチンタは『願望』を意味し、マニは『宝珠』を指し。チャクラは『円』ので如意宝珠法輪を意味する。これを略して如意輪。六本の手で右手は頬に当て、右膝を立て、両足裏を合わせる輪王座という姿勢をとっています。人々を苦悩から救い、その願いをかなえてくれると言う。如意宝珠は思うがままに珍宝だし、苦しみを取り除くと言われる。密教法具は煩悩を打ち砕き、法輪を持つことで役割を明らかにしています。六観音の一人です。


 このルーツもはっきりしませんが、名前からしてチャクラとの関連が想像できます。なお、この真言が有名な光明真言と似ていると思われた方もあるでしょう。光明真言は下記の通りです。 
 オン・アボキャ・ベイロシャノウ・マカボダラ・ダラマニ・ハンドマ・ジンバラ・ハラバリタヤ・ウン

 ・聖観音・梵名:アヴァローキテーシュヴァラ   ・真言:オン アロリキヤ ソワカ
           種子 サ
仏の慈悲の「非」をもって、現世の生活に悩む人の苦しみを救います。阿弥陀如来の化身と考えられています。頭上には阿弥陀の化仏を付けています。単独像のほかに勢至菩薩と一緒に阿弥陀如来像の脇侍となる場合もあります。


 ・不空羂索観音・梵名:アモーガパーシャ   ・真言:オン アボキャ ビジャシャ ウン ハッタ
             種子 モウ   二重母音「モウ」と書いていますが、梵字では長母音「モー」です。(指摘をいただきました。)

不空とは、願いが空しくないという意味で、羂索とは、戦いや狩猟に用いる環のついた投網。菩薩の網でもれなく苦悩するすべての人々を救いとります。六観音の一人です。

 この名前のひとつマヘーシュヴァラはシヴァの有名な異名のひとつです。日本では摩醯首羅天(まけいしゅらてん)として信仰されています。そもそも不空羂索観音の多くの像は額に第三眼を持っており、これはまさにシヴァそのものといえるでしょう。

 
 ・准胝観音 ・梵名:チュンディー   種子ボ   真言オン・シャレイ・シャレイ・ソンデイ・ソワカ

 観音の女性神格の代表のひとつですが、元々チュンディーというのはシヴァの妃のひとり、ドゥルガー女神の異名のひとつです。
 
 ドゥルガーというのは古代の神々と阿修羅との戦いの時に神々が共同で産み出した荒々しい女神で、三叉戟・円盤・ホラ貝・槍・雷・鈴・水瓶を持ち、ライオンに乗って進軍する強い女神です。この女神の登場によって戦況が大いに転換したのです。

 またチュンディーという言葉はチュンティー(泉)にも通じるといわれています。つまり准胝観音は水の女神という性格も強く持っており、仏教的には水の浄化の働きにより清浄をもたらす女神ともいわれます。

 ・馬頭観音 ・梵名:ハヤグリーヴァ   ・真言:オン アミリト ドハンバ ウン ハッタ
           種子カン 梵字は、「ウン」なのですが、「カン」と読むようです。

   田淵さまから、以下の指摘を受けました。詳しくご存知のかたは、教えてください。
     「馬頭観音の種字ですが、これはアシュク如来と同じであり、humですから、
      伝統的狭軌では「ウン」になると思います。「カン」ではないと思います。
      もともと、「カン」「カンマン」も含め、現代語ではkaで発音されている音は
      弘法大師の時代にはhaであり、現在haで発音されている音はpa(奈良時代・
      古墳時代はfa)であったと考えられています。従って、もとは同系統の
      hに似た字が、「ウン」になったり「カン」になったり「カク」になったりします。
      また、現在、「キャ」と発音されているものは元来、kの帯気音khであり、
      ギリシャ語のχに相当しますが、この音は正確に発音するのが難しく、
      日本に伝わる過程で、音が変わってしまったのだと思います。ちなみに、キリストも
      もともとギリシャ語でχρισtοσですが、語頭のχはいろいろ読まれることがあり、
      キリスト、フリスト、ハリストなどと読まれます。」




馬頭観音の頭上に馬の頭があります。普通は馬頭観音と呼ばれますが、梵名をそのまま訳して、大持力明王または、馬頭明王とも呼ばれます。忿怒の形相で表されるため、この形相で様々な苦悩や災難などの諸悪を粉砕します。また、馬頭観音は家畜や荷物を運ぶ馬の守り神として路傍の石仏にも多く見られます。六観音の一人です。

 これはこのままハヤグリーヴァという名前の神様がインド神話に出てきます。馬のたてがみを持つ神で、ダーナヴァ族の王ということになっています。この観音は明王的な性格を持っていたようですが、日本の民間信仰の中ではいつの間にか農耕馬の守り神になってしまったようです。

白衣観音(びゃくえかんのん)       種子ハン
 オン・シベイテイ・シベイテイ・ハンダラ・バシニ・ソワカ
観音中、もっとも女性的な優しさを持つのが、この白衣観音です。
そこから、息災除病、救児、安産の本尊ともされます。
曼陀羅上での姿は、左手に未開蓮華、右手に揚掌などの一面二臂、もしくは三面六臂像であらわされます。

みなさんのお知恵を拝借
 ○絵画などでは拝見したことはあるのですが(祖母の持っている西国めぐりの朱印帳の中央が白衣さまでした)、鎌倉や高崎などにある大きな仏像でしか、お目にかかったことがありません。非常に美しい立ち姿なのですが、あのような巨大な像ではなく、どこかのお寺でご本尊として、白衣観音様をおかれている寺院をどなたかご存じないでしょうか?
また白衣観音を祭っておられるお寺は、比較的新しいお寺が多いように見受けますが、昔からそれほど本尊としてお祭りされてこなかったのでしょうか?                                               Carpe diemさん

前仏としてや本尊とは別に塑像があったりのようですが、本尊として祭られているところは少ないようです。京都・北野天満宮近くの東向観音寺の白衣観音堂に収められている高王白衣観音さま、子供を抱かれたお姿でおられるそうです。
中国でたくさん信仰されて、黄檗宗万福寺の白衣観音像などもあると聞きました。
ほとんどは、子授け・安産の観音様とありましたが、市川智康さん(池上本門寺学頭、日蓮宗前伝道局長)が書かれた「仏さまの履歴書」という本の中では、兵乱天変の防止が役割だとあるようです。世の中が、不安定になって戦争が多く起こるようになると、この観音様が出動されるといった意味なのでしょうか?
中国では、白衣観音さまが信仰されているとのことですが、弥勒教の影響のようです。そして弥勒教は、ミトラ教が東方から伝わって中国で道教や仏教やその他様々なものが融合されて、独自に発展していったものだと聞きました。その経緯の中で、白衣観音の信仰があったようです。                                                Carpe diemさん 

白衣観音さんは中華街・南京町では陶器の商品では結構置いてます。中国では結構白衣観音は信仰されているようです。                 武侯仁従さん

白衣観音は胎蔵曼荼羅の観音部にもいらっしゃいますよ。白は清浄菩提心の意義で、観音部の部主です。インド起源の尊だと考えられています。ただ江戸時代中は、マリア観音として隠れキリシタンの信仰もあったみたいですね。  隆蓮房さん

諸仏を生ずる観音の母ともいわれており、三十三観音の一つに数えられています。右手には私たちの願いを叶えてくれる如意宝珠を持ち、左手の水瓶には萬徳の知恵の水を蓄え、私達に注ぎ知恵を授けてくれます。心静かに合掌し、白衣観音ご真言「オン シベイテイ シベイテイ ハンダラ バシニソワカ」と 念誦すれば一切の災難は消滅し、不吉祥は吉祥になるといわれております。
宮城県仙台市に真言宗智山派 大観密寺というご本尊が白衣観音様の寺院があります。          智さん

白衣観音そのものは三十三観音の一つとして中国で成立した物の様ですね。やっぱり主流では無いということなのでしょうか?白衣観音様、まず手元の資料(学研)を紐解いてみましたが、御本尊として独尊でお祀りされているところは無さそうですね。
画像で検索かけると、墓地などに仏様の供養のためにお祀りされている物は出てくるのですが……。お姿が美しいので、独尊で祀っておられるお寺、あっても良さそうなものなんですけどね。                          是々さん 


揚柳観音(ようりゅうかんのん)       種子サ
 オン・バザラダラマ・ベイサジャ・ラジャヤ・ソワカ
薬王観音ともいわれます。
後述する三十三観音の筆頭で、衆病消除の信仰を持ちます。
像容は「右手に柳枝を持ち左手を乳上におく」らしいです。

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